You Copy?
「…ねぇ、姫さん。何かいい事あったの?」
『えへへー、分かっちゃいました?』
「そりゃぁ…そんなデレデレしてたら分かるよ」
朝食後、みんなでお茶を飲んでいたら猿飛さんにそう言われた
ええ、自分でもによによニヤニヤしてるの分かりますとも。仕方ないじゃないか
『今日の夢に兄さんが出てきたんですよっ!!!』
「へ、へぇ…」
「秀吉さまがですかっ!!?」
「食いつくんじゃねぇよ石田。だから雪子の兄貴は豊臣じゃ…」
『元親、実は秀吉さんが出てきたんだよ』
「はぁ!!?」
すっとんきょうな声をあげた元親、そして他の武将たちも驚いている。小太郎くんだけは首を傾げていた…ああ、説明してなかったね
『私の死んだ兄さん、秀吉さんに似てるらしいの。だからそんな夢見たのかな』
「…兄が夢に出たのが、そんなに嬉しいのか?」
『そりゃそうですよ片倉さんっ!!久しぶりに話せたし頭撫でたりなんかされちゃったし…きゃーっ!!』
「…姫さんのまわりにお花畑が見えるよ」
夢を思い出して幸せの余韻に浸る私に、まわりは若干だが引いていた
一番に落ちてきた元就さんと元親、そして大谷さんは私のブラコンっぷりを知ってるから驚きはしない。むしろ三成は羨ましそうだぞ
そしてもう一人…
「雪子殿は兄上をお慕いしておるのだな!某にも尊敬する兄上がおりましたっ」
「いや、大将のそれと姫さんのは別物だよ」
「?」
「だが、雪子はほんと兄貴大好きだな…」
『もちろん!私は初恋もファーストキスも兄さんに捧げたから』
「ぶはっ!!!!!」
「っ!!!!!!」
「なんだとっ!!!?」
『………あれ?』
私がそう言った瞬間に元就さんは飲んでいたお茶を吹き出し、大谷さんは湯飲みを落とし、政宗さんは勢いよく立ち上がった
まわりの人と私は驚いて固まるだけだ
「ま、政宗様…いかがされました?」
「刑部っ!!!火傷はしていないかっ!!?」
「毛利、むせてねぇで拭けよ」
『…初恋ってたいていお父さんかお兄ちゃんじゃないですか?』
「いや、俺様に聞かれても…」
私の基準だとてっきり…ああ、じゃああれか
『ファーストキスの方ですか?』
「何度も言うでないわっ!!!!!」
「雪子のFirst kissの相手が豊臣秀吉だとっ!!!?」
『だから兄さんは秀吉さんじゃないってばっ!!!』
「…ヒッ、ヒヒッ…内臓が、飛び出るか思うたわ」
「…佐助、ふぁーすときっすとは何だ?」
「さぁ…風魔、知ってる?」
「………(フルフルッ)」
「政宗様が知っているのなら、南蛮のものじゃねぇのか?」
「では何故、刑部と毛利も知っている?秀吉さまと雪子様が何をしたのだ?」
「…三人の反応見てると、良いものじゃなさそうだがな」
『あ、勘違いしないでください。幼稚園…4、5才くらいの小さい頃ですよ』
「…太閤とぬしは7つほど年が離れておった気がするが?」
「Ah?じゃあ5歳と12歳…holy shit!」
「…近親婚にしては近すぎる」
…そうか、戦国時代だから結婚とか早かったんだ。でも元就さん、結婚は極端すぎませんか?
確かに兄さんは大好きだけど、恋愛感情とは頑張って線を引いてるつもり。それより政宗さんは分かるにしろ、なんで元就さんと大谷さんもファーストキスの意味を知ってるんですか
「昨日の真昼、ぬしらが留守の間にてれびでやっておった」
『昼ドラかっ!!!』
「〜〜っ!!!!」
『違います元就さん!あんなディープなものやってないです!ちょっとチュって触れるだけでした多分っ』
「何が触れたのでござるか?」
『いや、真田くん…そんな純粋な目で見ないで…!!』
「真田…こう、太閤と雪子の唇と唇が触れたのよ」
大谷さんが真田くん…と三成の目の前までやってきて、指先と指先を触れさせて…離した
そう、彼らの分かるように言うなら接吻だ
「………ああ、雪子と兄貴が接吻したってことか?」
「なっ−…!!ちょ、鬼の旦那っ!!!そんなあっさり言わな…!!」
「「!!!!!!」」
『きゃぁっ!!!?』
元親が答えを言った瞬間、真田くんと三成は壁まで飛んでいった…そう、本当に飛ぶような勢いだった
…純情コンビにはちょっときつかったか
「は、はは破廉恥なっ!!!兄妹で、か、かか、かような、ぬぁぁぁあぁぁぁっ!!!!」
「ひ、ひひひで、秀吉さまと雪子様が、その、ような−…!!」
『いや…たいていのファーストキスってお父さんやお兄ちゃんに奪われてるもんじゃない?』
※雪子基準です
「いや…だから俺様に聞かないでよ」
部屋の隅で悶絶する二人…三成に至っては泣いてる気がするけれど。今では小さい頃の思い出だよ
『それ以来、キスなんかしてないし。兄さんは大事な時までとっておけって』
「貴様の兄はまだ正常だったようだな」
「チッ…朝から胸糞悪いぜ…」
「…小十郎は、政宗様が接吻の南蛮語表記をどこで学んだのか心配にございます」
「…気にするな」
「朝から騒がしくなっちまった…なぁ、風魔」
「…………」
この騒ぎの中、元親と小太郎くんの二人だけは落ち着いてお茶をすすっていた
…もしかして一番大人なのは彼らかもしれない
mae tugi