誰しも可愛かった頃はある


『うーん…朝食はどうしよっかなぁ、あまり時間ないけど』

「じゃ、じゃあ今朝は俺が作ってあげてもいいよ!ナキさんより俺の方が上手いしっ」

『えー…酷いな思春期忍者。私だって頑張ってるんだぞ下手だけど』

「違っ―…!だから、俺が作ってあげてもいいよってだけで別にナキさんの料理が嫌いなわけじゃ…!」

「おはよう、」

『ん?ああ、おはよう佐吉くん。今朝も今朝とて可愛いな君は』



佐助くんと台所でワイワイやってたら、可愛い佐吉くんがとことこやって来た

おはよう、珍しく早いな



「…今朝も今朝とて顔色悪いね、お前」

「貴様は今朝も顔が悪いぞ、猿」

『ぶはっ!!』

「顔が悪いって何っ!?つか、それって大谷の旦那が言ってたんだろっ!?」

「ぎょうぶは何も言ってない、なぁぎょうぶ?」

「ああ、」

「顔を洗いに行くぞ」

「あい、わかった」



そう言った佐吉くんは刑部さんの手を引いて洗面所に向かう

その後ろを引っ張られるがまま歩く刑部さん。こらこら、刑部さんは小さいんだから歩幅合わせてやりなさい



『さて、朝食。やっぱり今日は私が作るよ、えっと卵は…』

「・・・・・」

『ん?どうしたよ佐助くん』

「いや…さっき、佐吉が手を引いてたのって…」

『…………』

「小さい…子供だったよね?」

『…………』

「…………」




……………は?








『え、さっきはナチュラルに流しちゃったけど刑部さん?この子、本当に刑部さん?』

「本当の本当にぎょうぶだぞ」

「いやいや佐吉よく見ろって。どう見てもお前より年下だろ」

「……ヒヒッ」



佐吉くんの隣にちょこんと座る可愛らしい男の子。弁丸くんと同じくらいだろうか

目の色が同じだけで刑部さんの面影は無かったけど…今の笑い方は間違いなく彼だ



『うわぁ…どうしてこうなった。刑部さん小さくなる薬でも飲まされちゃったの?』

「…くすりは苦いから、すかぬ」

『・・・・』

「…今、ちょっとときめいたでしょ」

『いやいやまさか刑部さんにときめくなんて冗談を…お名前言える?』

「吉治。この前、7つになったばっかりよ」

『ちょ、指で年を伝えないでよ可愛いなっ!!この子可愛いんですけど!禿げるんですけど!』

「なっ―…!ダメだぞナキ!はげるなんて私は許可しない!」

『禿げないよ君も可愛いな佐吉くんっ!!』

「幸せそうだねナキさん」



いや、まさか刑部さん…もとい吉治くんがこんな可愛い子供だったとは思わないじゃないか

どうしてひねくれた。どうしてあんな大人にしてしまったんだ神様



「…さきち、さきち」

「ん?何だ?」

「かわやはどっちにある?」

「ああ、こっちだ。行くぞ」

「ヒヒッ」

『おー…』



そしてまた吉治くんと仲良く手を繋ぎ、トイレに案内する佐吉くん

いつもは刑部さんが佐吉くんを引っ張って、佐吉くんもそれについて行って。だけど―…




「佐吉のやつ、旦那が小さくなってるの気づいてるよね?」

『いやぁ、自信を持って頷けないなぁ。でも刑部さんってのは解ってるからいいんじゃない?』

「何を暢気な…!」

『あはー、元の刑部さんが見たら佐吉くんのお兄ちゃんっぷりに感激涙だね。しかし困ったな』



子供は好きだけど刑部さんをこのままにするわけにもいかない…いや、可愛いのは問題ないが

何故、刑部さんが幼くなってしまったのか。そしてもう一人、我が家には子供じゃない人が居るわけで



「ナキーっ!!!」

『ん?どうしたの梵』

「…なんか、嫌な予感がするんだけど」

「こじゅうろうが居ない!あと変な奴が居るっ!!こっちついてくる!」

『………あはー、』



半泣きな梵が飛び込んできたかと思えば、こじゅうろうが居ない!と大騒ぎ

その後ろからはパタパタと違う足音が。開いた扉の向こう、こっちをじっと見つめる小さな男の子



「…………」

「ヒッ―…こ、こっち来るなよお前!オレに用かっ!!」

「だって…お前がよぶから来たんだぞ」

「呼んでない!オレはお前なんか知らないし!」

「俺だってしらねぇもん!けど名前をよんだだろ!」

『…………』




小十郎くん、

そう恐る恐る呼んでみたら、男の子は私をじっと見上げてきて




「…なんで俺の名前しってんだ?」



不思議そうに問うてきた小さな小十郎くん

その眉間にはいつもの深いシワなんて見つからなかった







「ま、まさか片倉の旦那まで小さくなったとか…!」

『いやぁ困ったねどうしよっか、あ。小十郎くん、もう動いていいよ』

「ああ」

「本当に困った人は子供の髪の毛で遊んでないと思うよっ!?」

『遊んでないよ失敬だな』



膝に乗せてた小十郎くんの髪型は普段と同じ綺麗なオールバック、ワックスで固めました

やっぱりこっちがしっくりくるね、うん面影もバッチリだ



『梵もこっちおいで。この子は小十郎くんだよ?』

「こじゅうろうは大人だ!そんなガキじゃない!」

「だから、俺は小十郎で…」

「ちがう!」

「…………」

『おぉう…』



小さな小十郎くんがしょぼんとした。いくら子供とはいえこんな彼は新鮮だね

梵の反応も分かるけど…ちょっと可哀想だ



『ん、おいで小十郎くん。お姉ちゃんが遊んであげるから』

「…お前、やしきの奴なのか?」

『話せば長くなるから置いとくけど、私はナキだよ。君の親代わりだ堅物少年』

「…………」



一瞬だけ困った顔をした小十郎くんだが、両手を広げれば素直にトテトテとこっちに戻ってくる

しかし飛び付くことはせず目の前で立ち止まった。そこは流石だね堅物少年



『あはー、君はいくつかな?』

「…7さい」

『おお、吉治くんと同じかい。じゃあお友達を紹介しようか、おーい吉治く―…』

「ことわろう」

「っ………」

『おぉふ…』



即答でお友達拒否をされてしまい半泣きな小十郎くん

対する吉治くんはニヤニヤと変わらない笑みを浮かべていた。小さくても二人だね安心しました



『そう言わずに仲良くしよう、そうしよう、ね?』

「…………」

『…何で佐吉くんが拗ねるのかな。別に君の友達をとるわけじゃないよ』

「われも、さきちだけでよい」

『寂しいこと言うね君も!ほら、小十郎くんこっち来て』

「う゛…そいつ、俺がきらいなんだろ!」

「ああ」

「〜〜っ!!!」

「ヒヒヒッ」

『………はぁ』



ものすごい笑顔で拒絶された小十郎くんは、ダダダッと部屋から飛び出してしまった

朝食はまだだし他の子も起こさなきゃいけないし小十郎くんは追わなきゃいけないし…思ったより大変だな、これ



『…朝食、やっぱりお願いするよ佐助くん』

「うん、任せて」

『こんな時に大人な二人のありがたみを知るとは…さて、とりあえず小十郎くんを…あれ?』




……梵も消えた








「お、おい!」

「っ!!!?」

「うおっ!?きゅ、急に振り向くな!」

「お前、えっと…」

「ぼ、梵天丸だ…お前ほんとに、こじゅうろうなのか?」

「…………」



追いかけた部屋の隅っこで、じっとこっちを見てくる自分より小さな子供

こいつに見覚えはなくて、でもナキはこいつを小十郎と呼んで。自分をいつも叱る従者の面影はまったくなかった



「…あいつ、お前のあねうえか?」

「ナキのことか?違う、こじゅうろうのよめだ」

「俺、まだけっこんしてねぇ」

「だからお前じゃない!こじゅうろうは、もっと大きくて強いんだぞ!」

「…………」

「…………」




自分をいつも叱る従者は…こんなに小さくない

刑部にバカにされても逃げないし、自分の側にいつも居て頼れる自慢の従者だ。だけど―…



「お前、弱っちいぞ!」

「な、…お前だって俺からにげてただろ!よわいじゃねぇか!」

「オレは弱くない!いくぞ、こじゅうろう!」

「うわっ」



座っていた小十郎の手を掴み、グイグイと引っ張っていく。戻るのはもちろん皆のいる居間



「ぎょうぶとか佐吉から逃げんな!オレも一緒に行ってやる!」

「っ―…!」

「逃げるとなめられるからな!男がなめられちゃ負けだぞ!」





そう、小十郎は言っていた






20130727.
続く気がする
刑部さんは二次創作一般な紀之介、堅物男子は幼名が残ってないので小十郎のままで←
(20131222.バサマガに刑部の幼名が記載されましたので、吉治に訂正しました)


小十郎くんは養子に出されてる期間設定です。幼児化キャラが決まらない…!


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