友達と巡り会う


『えっと…歯ブラシ洋服パジャマに食器、こんなもんかな。夕食の材料は後で買いに行こっか』

「くそ…なんで俺が荷物持ちなんだよっ」

『はは、女の子に重いものは持たせちゃ駄目だよ子守り忍者』

「その呼び方やめてくれないっ!!?」

『それにさ、私は荷物なんか持てない状況なんだよ』



キーキー騒ぐ佐助くんは顔が見えなくなるくらい荷物を抱えていた

ちなみに彼の格好は黒のTシャツとジャージ。桃色パーカーは着てくれませんでした


そして私の右手には弁丸くん、左手には刑部さん、刑部さんの隣では佐吉くんがガッツリすがりついている



『あはー、いきなり外は刺激的でしたかね』

「ぎょうぶ!なんだあの塊は、速いぞっ!!」

「ヒヒッ…引っ張るでない佐吉、着物が伸びる」

「お姉ちゃん、お姉ちゃん!あれってくるまだよね、家に行く途中で教えてくれたやつ!」

『うんうん、そうだよ』



ただ一人、弥三郎くんだけは瞳をキラッキラに輝かせてる。まぁ、彼は外で迷子になってたからね

弁丸くんもさっき説明したはずなのにな、ビビりすぎ



「ナキよ、佐吉の手を繋いでやれ。われは端を行く」

『なに言ってるんすか刑部さん。私が支えなきゃ歩けないでしょ』

「………」

『遠慮せずに腕を絡めちゃってください、私は平気です』



腕を組んで歩く私たちは他人から見ればどう映るだろう?

足が悪いらしい刑部さんを支えるために寄り添っているのだが、なんだか彼は居心地が悪いようだ

歪められた眉に戸惑いが見える



『やだ、刑部さんってウブですか。女の子と腕絡めて照れてます?』

「ヒッ…何を言うかと思えば。女ならば腕など出さずとも煩わしく集ってくるわ」

『虫扱いかコノヤロ、百戦錬磨とか言いたいんすか』

「そう見えるか?まぁ、ぬしごときの女は相手にせぬ主義でなぁ」

『むかっ…一夫多妻な両刀使…!』

「子供の前でそんなこと話すなっ!!…やだ、こんな奴に世話になるとか…」



おっと、佐助くんが本気で涙声になり始めたからやめてあげよう

弁丸くんも彼を心配していて、私から離れて駆け寄るべきか否か悩んでるようだ。ほら、行ってあげなさい



『んー…公園で休憩しようか?迷子にならない限り、いろいろ見てきなよ』

「いいのっ!?えっと、じゃあ、あれ見てくるっ」

『おー、噴水だね。入っちゃ駄目だよ』

「うん、行こう弁丸っ」

「うむ!」

「ちょ、勝手に行っちゃダメだってば弁丸様っ!!」



仲良く手を繋いで走る弥三郎くんと弁丸くん。それを慌てて追いかける佐助くんは…やっぱり子守り忍者

彼らに手を振って見送りつつ、私たちは噴水が見えるベンチへ腰掛けた



『佐吉くんは行かないの?』

「行かん」

『そっか、そっか。じゃあ膝にでも乗る?』

「乗らん」

『…子供は素直にしときなさいよ』

「ヒヒヒッ、佐吉は素直な子よ」

『あ…』



刑部さんが頭を撫でたら嬉しそうに目を細める佐吉くん

他人を寄せ付けないような目をする子だけど…ああ、やっぱり、子供なんだなって



『…正解だった』

「ん?」

『…私は間違ってなかった。君には刑部さんが必要だよね』



きっと佐吉くんはこっちの生活にすぐ慣れちゃうだろう

刑部さんが居るから。彼が「大丈夫」と一言言えばそれでいい



「………」

『…刑部さん?』

「佐吉、」

「む?」



何を思ったのか、刑部さんは佐吉くんの耳を両手で塞いだ

きょとんと彼を見上げている、え、ちょ、なにこれ可愛い



「…佐吉はわれを必要とはせぬ、こ奴が必要とするのは絶対的な主だけよ」

『主…あ、豊臣秀吉か』

「ヒッ…必要とするのはわれの方、われがこ奴を必要とする」

『………』

「われの友は佐吉だけよ」



ヒッヒと愉快そうに笑うが言ってることはとんでもない。小さな子供だけが友達とか

何か言い返そうと口を開いた瞬間、浅井先輩の言ってた戦国うんちくを思い出す




『…頭巾の人』

「頭巾?」

『刑部さん…私には何も考えず接してくださいよ』

「っ……」

『腕だろうが何だろうが触れても絡めても、いいんですよ』



さぁ、ウェルカム


彼の足の不調は怪我じゃなく病気。なんで思い出せなかったのか、私のバカ野郎

…さっき歩いていた時、腕を絡めて戸惑ったのは照れなんかじゃなかったんだ



『刑部さんのお友達はまだまだ小さいですからね。ここでは私が支えてあげます』

「…ヒッ、支えてあげる、か。ずいぶん上からよなぁ」

『ん?対等がお望みですか』

「いや、われは相手より有利に立っておきた…」

『よし、じゃあ私もお友達になってあげますよ!』

「…やはり上から目線か」



顔を引きつらせる刑部さんを華麗にスルー。昔からよく言われるんだ、話を聞かない奴だって

それでも、貴方に不利には動きません



『今から私たちは友達、ね?』

「………」

『…そんな嫌な顔しないでくださいよ。そんなに信用なりませんか?』

「いや…ぬしは、妙な女よなぁ。だが…」

「お姉ちゃーんっ!!弁丸が水に落ちたぁぁぁっ!!!」

『えぇっ!!?ちゃんと見てなさいよ子守り忍者っ!!』

「・・・・」



何か言いかけた刑部さんを放って、私は噴水まで駆け出した

聞こえる弁丸くんの泣き声…やばい、タオル持ってきてないぞ大丈夫か







「…あの女、いつか泣かしてやるわ」

「ぎょうぶ?」

「嗚呼、すまぬ佐吉。もうよい、耳を塞いですまなんだ」

「いや、平気だ…ナキと何を話したんだ?」

「とりとめもない話よ…気になるか?」

「気になる、なぜ、ぎょうぶは楽しそうなんだ?」

「ヒッ……」






20130113.
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