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サマサを出発してすぐに起きた異変は、想像すらしていないものだった。

大三角島から離陸を開始した飛空艇を南に向けると、その方角から地鳴りの様なものが低く呻くように響いてきたのだ。

「島が…!?大地が…叫び声をあげている……」

ティナが話した直後、大陸の一部がまるで操られているかのように剥がれ始める。上空へと浮かび上がった大陸は飛空艇よりも遥か上に留まり、その大地を見たストラゴスが重苦しい表情で語り始める。

「魔導の始まり……三闘神」
「あれが?」
「石化せし3人が向かい合い力を中和させることで自らを封じたと言われておる」

その言葉を聞いて過去の記憶が呼び起こされる。
確か魔導研究所でケフカが口にしていた言葉だ。今起こっている現象が三闘神の影響だとすれば、ガストラ達はその神を復活させたということになる。

「三体の石像の視線がそらされた時、バランスが崩れその力は世界を滅ぼす」

ストラゴスの話を聞いたあとに上空に浮かんだ島に視線を向ける。
世界を滅ぼす力を手に入れてまで、帝国は一体何がしたいのか。だが、間違いなくそこには平和という考えは存在しないのは分かっている。

ケフカとガストラを阻止するために、あの大陸に向かうのが今の我々のやるべき事。準備をするためにアルブルグの町へとやってきたが、その途中で見えた帝都の様子は見るも無残な姿になっているのが遠目で分かった。
ベクタを離れる際に起きた爆発。
あれは、我々リターナーが帝国の作戦に気付いて後をつけてこないようにと葬る作戦だったんだろう。自分達はすぐに逃げ出し難を逃れたが、あそこに留まった兵士達とバナン様は……。
希望的観測が出来ない光景に見切りをつけるしかなく、その為にもケフカたちを止めなければならなかった。

しっかりと装備や気持ちの準備を整え、魔大陸へ向かって飛空挺の高度を上げていく。
上昇していく途中で襲い掛かってきた異色の存在二体と帝国がけしかけてきた戦闘機を難なく撃退し、今度こそ敵の中心部へと向かう。

飛空艇から大陸に移る前に、ルノアの様子を見に行くと大陸をじっと見つめ続けていた。

「俺達と共に行くつもりは本当に無いのか?」

「そんな約束はしていない」

「倒すのなら人数が多い方がいい」

「私と貴方達では目的が違う。無駄な事をするつもりはない…」

「…そうか。ならば機を逃さないようにしてくれ」

無言のうちにその場から離れていくルノアは、皆から離れるように甲板の後ろの方へと移動していった。
ロックとマッシュに声を掛け、飛空挺の縁へと足を乗せ眼下に広がる景色を眺めた。
着地する場所を見誤らないようにしっかりと確認し、それから勢いをつけて高々と空中へ身を投げた。

無事に着地をすると、最後に降りてきたマッシュを応援するユカの大きな声が響いてくる。必ず帰ってきてと何度も伝える彼女の言葉に手を挙げて応えるマッシュは自らに気合を入れて歩き出していった。
その後をついていくように異形な大地を進んでいくと、程なくして見覚えのある人物が倒れている事に気付いた。

「シャドウ!!」

うつ伏せになっていた相手を助けると帝国に捨てられたと話すシャドウ。そのままこの大地に置いて行くことは出来ないと半ば強制的に相手を仲間に引き入れて大陸の奥へ進んでいくことを決意する。

この場所では地上で見たこともない姿のモンスターばかりが存在していた。攻撃力も格段に高く集団で襲ってくる相手と戦うのは想像以上に体力と魔力を消費していく。
アイテムなどを使いながら入り組んだ構造の大地を進み、どうにか休めそうな場所まで到達した我々は、疲弊した体をしっかりと休め、また歩みを再会した。

地面へと吸い込まれ別の場所へと進んでいく特殊な地形。
奥地に到達した俺達を待ち構えていたのは、今まで見てきたモンスターの中でも群を抜いた存在感を放っていた。

『我が名はアルテマ…たい古に作られし最高の力なり…我は力であり、生命にあらず…弱き生命体よ、きえされ!!』

自らをアルテマと名乗り、生命ではないと語る強大な敵は青白い炎を吐きながら素早い動きで大きな脚を振り下ろす。えぐられた地面にはっきりと爪痕が残る程の力を目の当たりにして、油断は命取りになるだろうと感じた。

ロックが素早い攻撃に続きマッシュが技を繰り出す。シャドウの投げる武器が敵の皮膚に突き刺さるが、まるでそれを感じていないかのようにアルテマは攻撃を開始する。
相手が尻尾を大きく振り上げ四肢に力を入れた直後、大地がひび割れるようにして襲い掛かってきた。
割れた地面からの攻撃は、そこにいた全員がダメージを受けるほどだった。対策を講じるためにレビデトを詠唱し、直接地面から体を離したあと、機械を使い攻撃を続けていく。

回復をしっかりとしながら仲間と協力して攻撃を仕掛けていると、突然自分の周りに奇妙な気配を感じた。空気中から突然出現してきた小さな紅い玉が、大きくなりながら周りに集合すると、一斉にその場で爆発を起こしたのだ。
避けようのない状況でそれを全て喰らうと、攻撃は分散するように散っていった。

「ッ…っぐ…ッあ!!!」

「兄貴!!」

「ッ…平気だ!自分で回復する」

焼け爛れた皮膚に痛みを感じながら魔法を詠唱し体力を回復する。攻撃の頻度は遅いが、一撃が想像以上の威力がある。これを何度も喰らっていては、行動が回復ばかりになり攻撃がおぼつかなくなるだろう。
長期戦を覚悟で魔法を反射させるリフレクを唱え、回復をアイテムで補いながら攻防を繰り返していると、アルテマに膨大なエネルギーが集中していることに気付く。

直感的に感じた危険は必ず的中するのを知っているからこそ被害を減らすために魔石を取り出しゾーナシーカーを召喚した。
身構えてすぐに空に向かって大きく咆哮したアルテマの周りが空間ごと歪み、黒と赤の閃光がほとばしった瞬間、仲間全員が無数の爆発に襲われた。

肢体が千切れるかと思うほどの威力に体力が削られていった。地面に膝をついて荒い呼吸を繰り返しながら次の一手を模索していると、シャドウが攻撃を仕掛けに向かった隙にロックがアルテマに対してリフレクを掛けた。
その意図に気付き、すぐさま敵に対してケアルラを詠唱すれば反射した回復魔法により大きく体力が回復する事が出来た。

アイテムと反射魔法で態勢を立て直したあと、強大な攻撃が来る前に決着を着けようとその場にいた全員が感じ取る。回復を止めて全行動を攻撃に転化し一気に力を叩き込めば、相手の巨体が崩れ落ちて赤い炎となって消えていった。

「・・・ようやく…か」

次の戦いに備えて体力を回復しようとしていたのだが、シャドウはまるで俺達から離れるように歩き出すとパーティーから抜けることを口にする。

「一度は帝国にこの身を売った俺だ…お前らといっしょに戦う資格はない…」

言葉を残したシャドウは俊足で俺達の前から姿を消してしまった。
ここまで共に戦ってくれたことに感謝しながらシャドウ抜きで前へ進むことを決めた俺達はリフレクを解除したあとケラルラを発動させて傷を癒し、エーテルを飲んで万全の状態で先へと進んでいった―――。


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