へし切さんの気持ち

へし切長谷部side


「…弟の方のへし切長谷部。」

声のした方を見ると扉の近くでここの本丸の山姥切が立っていた。

「…あぁ。」

俺は悟って席を立つ。

「ん。」

縁側に座ると酒を差し出してきた。

「悪いな。」

猪口を受け取り山姥切と乾杯をした。久々に酒を飲んだ気がする。部屋の中は相変わらず騒がしい。

「…アンタは、アンタの主に気があるのか?」

唐突すぎて口に含んだ酒を吹いてしまった。

「き、急に何を言うんだ!」

「いや、そんな動揺するとは思わなかった。」

すまん、と言って布を深く被った。

…お、俺が主に気があるだと?!



「俺は、尊敬している。」

「…尊敬か。」

「あぁ。俺に自由を教えてくださったんだ。」

言葉では表せれないな。主のことは。しかし、尊敬していることは胸を張って言える。

「…へぇ。」

そっちから聞いておいて反応薄い。

「その気持ちは、わかる。」

「…!」

「いつもアンタの主の話をしてへらへらしているが、いざとなった時は誰よりも頼もしいんだ。」

…共感できるな。


「長谷部自身は気づいていないと思うが。俺の主がアンタの主にちょっかい出している時、羨ましそうにその光景を見ているだろ。」

「…え?」

言ってる意味が理解できなかった。

「それはどういう…」

「わああっ!あるじさん?!」

乱藤四郎が叫んだ。

「何っ?!」

「…何かあったようだな。」

急いで主がいる部屋へと走った。

「主!どうなされたのですか?!」



「…どうした?」

「あ、主…?」

主が乱を後ろから抱きしめていた。

「それはこっちの台詞だよあるじさん!」

「…寒い。」

周りがもっと騒がしくなっている。なぜか俺は立ち尽くしてしまった。



「…あれ、長谷部ー?」

いつの間にか抜け出したのか俺の前に来た。

「あ、えっと…寒いのですか?」

「おー。なんでだろー。」

俺はどうすればいいんだ。

「…なーに悩んでんだよー。」

自身の隣をぽんぽんと叩いて俺を座らせるようにしていた。素直に隣に座る。

「やっぱり、長谷部はいいやつだなー…」

主は俺の頭を撫でた。全身が熱くなった。どくん、と胸がはち切れそうになった。

「〜ッ!!」

なんなんだこの動悸は?!なぜこんなに顔が熱いんだ?!

「ん?長谷部、あったけぇ…」

ぐしゃぐしゃと頭を掻き回した。

「えと、あの、あ、主。」

少し困った俺はちらっと山姥切を見ると、俺を見ながら小さく微笑んでいた。

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