いい夢、現実

「ただいま。」

玄関の扉を開けるのも面倒くさいくらい俺は疲れ果てていた。もう二時を過ぎてしまった。

「みんな寝てるか?」

「…そのようですね。」

それじゃあ玄関の電気点けたらマズいな。

審神者部屋まで音を立てないように歩いた。部屋の電気を点け荷物を近くに置く。

「はぁ…一日疲れ……んん?!」

「んー…眩し、」

ソファーで誰かが寝ていた。

「……。」

そんな警戒心を高めるんじゃねぇよ。

「…あ…主っ!」

素晴らしい速さで俺に抱きついた。



「大和守安定か。」

「…遅い。」

「ごめんな。」

「約束、守ったよ。」

「うん。泣かないで偉いぞ。」

大和守安定の背中を摩る。次第に静かになっていった。

「…寝たか?」

「そう、ですね。」

顔を覗いてみると目を伏せて寝ていた。

「よいしょ…っと。」

いわゆるお姫様抱っこをして歩き出す。

「あ、主!俺がやりますよ!」

あたふたとしている。

「これくらい大丈夫だ。へし切長谷部は風呂入って早く寝た方がいい。」

「わかりました…」

へし切長谷部は肩を落として後ろを向いた。

「…あ、へし切長谷部。今日はありがとうな。」

背中に言えばバッと振り返って、

「はいっ…!」

嬉しそうにするから俺も笑ってしまった。今日はいい夢が見れそうだ。






「…はぁ…あっつ…」

朝、異様な暑さで目を開けてしまった。まだ肌寒い時期なはず。しかも、なぜか動けない。

「んぬぅ…ぬしさま。」

「犯人はお前か。」

布団をめくって見ると図体がでけぇ狐が俺に抱きついていた。

「おい、小狐丸。起きろ。」

「もう少し…」

「いだだだだ…」

更に強く抱きしめる。骨、折れんじゃねぇの。

「小狐丸、暑い。痛い。」

小狐丸の頬をつねってみるとゆっくりと目が開いた。

「あれ…ぬしさま…?ぬ、ぬしさまっ?!すごい汗ですよ?!」

パッと手を離し俺を起こしてゆさゆさと揺らす。酔う。

「誰のせいだ…というか、なんでお前が俺の布団に入ってんだよ。」

「人肌が恋しかったもので。」

どんな理由だ。

「はぁ…無駄に汗かいた。」

こんな汗やべぇのによく抱きついてられたな。

「すみません、ぬしさま…」

「いや、怒ってない。」

泣きそうになっている小狐丸の頭を撫でる。小狐丸も汗をかいていた。

「小狐丸も風呂入るだろ?」

「はいっ!あ、あの…一緒に…」

最後の方が聞き取れなかった。

「面倒くさいから一緒に入るか。」

「ぬしさまーっ!」

「あー、抱きつくな!」

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