「八戒、教えて?」
「はい、勿論。」

八戒は先生だったことだけあって、教えるのが上手いだろう。
教えを乞うには適任だと思った。

「じゃ、ここに座りましょうか。」
「え、なんで足の間?」
「牌がここだと見やすいので。」

なるほど、と納得して八戒の足の間に座る。
牌が見にくかったのだろうか、さりげなく肩を抱き寄せられて、八戒の厚くはないがしっかりした胸板に遠慮がちに背中を預けた。

しかし私はこれをすぐに後悔することになる。
八戒が牌を取るたびに密着度が増し、何か説明をするたびに吐息が耳をくすぐるのだ。
これではもう教えてもらうどころではない。
頬がうっすら染まってしまう。


「…という流れで麻雀は進行します。大体分かりましたか?」
「あ、うん、多分。」
嘘です、近すぎてドキドキしすぎて聞いてませんでした、なんて言えない。

「一通り説明したので、一回自分で打ってみますか。」
「へ!?」
どうしよう、ほとんどルール分からない…。
分からなくなるたびに八戒を見上げて指示をあおぐ。

「本当にno nameさんはからかいがいがありますね。」
「ん?なんて言った?」
「いえ、たいしたことではないです。」
八戒がくすりと笑って何か呟くが、必死に次捨てる牌を考えている私の耳には届かない。




「一応聞くが、あれは牽制のつもりか?」
「はい。しないよりはましかと思いまして。」
(((こえー。)))


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