泣き出すのに理由なんて
「侑士、別れよう。」

「…がくと?」

いつも通りの昼休み。
岳人が俺の教室まで来て、二人で屋上へ上がる。
給水塔の上で弁当を食べながら他愛もない会話をする。
何も変わらない、はずだった。

「いきなり、なんやねん岳人。笑えないで。」

「冗談でこんなこと言うかよ。」

いや、そこは冗談てゆうとこやろ。なんでいきなり別れ話やねん。

「…俺、なんかしたんか?」

「侑士のせいじゃねぇよ。」

「じゃあなんでや?いきなりそないなこと言われても、俺訳分からへんのやけど。」

昨日まで…いやついさっきや。弁当食べてる間までは普通に話してたやん。

「俺にもわかんねーよ。わかんねーけど、俺…侑士と一緒にいていいか分かんなくなった。」

ぎゅっと膝を抱えて丸くなった岳人の肩は小刻みに震えている。微かに漏れる嗚咽から泣いてるんやって思った。

いつもやったらすぐに伸ばした手。それを伸ばせずにいるのはなんでやろ。

俺にも岳人が分からへんようなってしもた。

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