大掃除
「うわっ!きたねぇ!」

「人ん家いきなりきて第一声がそれか。」

「だってきたねーんだもん。」

物が散乱している床の隙間をたどって侑士のもとへ。
普段は綺麗な彼の家、どうやら大掃除の真最中らしい。

「あんなぁ…岳人。言いたかないけどな、これほとんど…」

「ストップ。言いたくないなら言うな。」

ぴしゃりと言い放つとなんとも形容し難い顔をして忍足は作業に戻る。
彼の言いたいことは分かる。なぜならこの散らかったもののほとんどが自分のものではなく岳人が持ち込んだものだからだ。

ぐるりと周りを見渡せば、懐かしい雑誌やゲーム、洋服まで山のようにある。
ここまで自分のものが揃っていれば岳人がこの家に入り浸っているのは一目瞭然。
その岳人の私物を片付けているのは本人ではなく、この家の主の忍足。本来自分のものではないのだから処分してもいいはずなのに彼はそれをしない。
雑誌を本棚に、ゲームをまとめ、服は洗濯をしアイロンまでかけてある。
なんだかその行為ひとつひとつがくすぐったくて、可笑しくて。

愛されてるな、と思う。

背を向けている忍足に忍び寄り、飛びつく。

「っ!!!ちょお、岳…何すんの…」

「よく働いてくれてる侑士くんにご褒美。」

不意打ちのキス。感謝の印。

「岳人…そんなんされたらもう掃除に集中でけへんわ…。」

「だーめ。続きは掃除のあと!」

ひょいと飛び降りキッチンへ向う。掃除を手伝うのは嫌だけど、コーヒーくらいいれてやろう。

先ほどの忍足の残念そうな顔を思い出し、込み上げる笑いをぐっと抑えてマグカップを温めた。







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