堂々巡り
愛している、なんて安い言葉だ。
まるでその言葉が挨拶のように彼は言う。
俺にも、俺以外の女にも。

「ねぇ侑士。俺のこと愛してる?」

「なん、急に…?」

「いーから。どうなんだよ。」

「めっちゃ愛しとるで岳人。世界一!」

それから、キスされて抱きしめられてセックスをした。いつも通り。

なぁ侑士。俺、お前の愛してるが信じられないんだよ。
お前の愛してるって何?
俺はしないけど、少しの浮気なら許すよ。他の女とキスしても、セックスしても、最後に俺の所に戻ってくるなら。
愛している、のが俺だけなら。
でもね、最近思うんだ。俺の愛していると侑士の愛しているは違うんじゃないかって。
俺は侑士となら一緒に死ぬのも殺されるのも怖くない。だって愛しているから。
侑士はどうなのかな、分からないよ。
それを侑士に聞けないのは怖いから。否定されて、そんな事出来ない、愛していないと言われるのが怖い。
事実を知ってしまったら俺は、どうなってしまうのだろう。どうやって生きていけばいいのだろう。

「今日の岳人…変やで?やっぱり何かあったんか?」

俺は黙って首を振る。侑士、愛しているなら気づいて。そして馬鹿な俺を笑ってよ。

「なんでもねーって…好きだよ、侑士…愛してる」

「なんや岳人…今日そればっかりやん。甘えんぼさんやなぁ…」

抱きしめられると侑士の体温をこんなに感じるのに心は遠いまま。泣きそうになるのを堪えて俺も侑士を抱きしめる。

あぁ愛している、このまま溶けて侑士とひとつになりたい。そうしたらきっとお前の愛しているが俺にも分かるから。







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