聖闘士星矢 | ナノ

Origin.


(「愛を謳うのは早すぎて」続編)


「ミロ様〜!」
「よ、ナマエ。」
「こんにちはっ! 今日もいい天気ですね! 聖衣の輝き日和ですね!」
「そうだな。」


目の前でにこにこと微笑む少女、名をナマエという。
以前アテナが連れてきたのだが、どうにも聖衣に相当惚れ込んでいるらしく、特に蠍座の聖衣にはぞっこんのようで。
毎日天蠍宮へ通う彼女にミロは恋心を覚えつつも、聖衣以外眼中にない彼女をどう振り向かせるかを常々思案していた。


「そういえば、射手座の黄金聖闘士様がお帰りになられたと聞きました!
是非とも是非ともお会いしとうございます!」


そういえば、あの時(黄金聖闘士が収集され、初めて彼女と会った時)は、アイオロスだけ遠方での任務で来れなかったな。
目の前で目をキラキラと輝かしている少女にミロは苦笑した。


「聖衣に、だろ?」
「う……あのですね、いや…その……。」


そう返してやれば、少女は気まずそうに顔を俯けた。
黄金聖闘士ではなく、黄金聖衣に彼女は会いたいのだ。


「くくっ、分かってるよ。アイオロスなら人馬宮だな。この1つ上だ。今から行くか?」
「え、ですが任務帰りに突撃するのは失礼では……?」
「突撃って自覚でもあるのか! ははっ。」
「し、失礼ですねっ! 私だってそれぐらい分かってますよ!」


む、と表情をころころ変えるナマエに愛しさばかりを感じる。
ミロは目を細めながら彼女の頭を撫でた。


「ま、アイオロスなら体力も有り余っているだろ。問題ない。」
「で、では行きましょう……!」


ほら、すぐに目を輝かせる。


「走ると体力なくなるぞー。」
「大丈夫ですっ! ほら、行きましょうミロ様!!」


――人馬宮


「アイオロスいるかー?」


結局すぐに途中でへこたれた彼女を抱えながら、ミロとナマエは人馬宮へ着いた。
小宇宙を感じるのでいることは明白なのだが、一応声は駆けておく。
すると、すぐに奥からアイオロスが出てきた。
トレーニングでもしていたのか、その額には少しばかり汗が流れている。
どうやら聖衣は装着していないようだ。


「ミロ? どうしたんだ?」
「いや、コイツが会いたいって言っててさ。」


そして彼女をおろしてやる。


「初めまして、アイオロス様! ナマエと言います!」
「あぁ、君が。話は聞いているよ、アイオロスだ。よろしく。」
「よろしくお願いします!」


アイオロスの大きな手にナマエの小さな手がおさまる。
ミロはそれをじっと見つめて無意識に眉を寄せた。
すぐに自分が嫉妬をしているのだと気づき、手で顔を覆う。


「(馬鹿か、俺は……。)」
「あ、あの。」


そう自分に呆れるのも束の間、ナマエが気まずそうにもじもじとし出した。
ミロは苦笑し、ナマエの頭に手を乗っける。
橙色の髪に自分の手が絡み合い、先ほどの嫉妬心は綺麗に消え失せた。


「(俺って単純…。)
アイオロス、良ければ聖衣をコイツに見せてやってくれないか?」
「聖衣を? ……あぁ、なるほど。もちろんいいとも。」


アテナかサガか、誰からか聞いていたのだろう。
アイオロスは嫌な顔一つせずにナマエとミロを居住区へと招き入れた。
長い廊下の一番手前にある部屋のドアを開けると、太陽光に反射して輝く射手座の聖衣が。


「おおおお!!」


誰かなんて、言わなくても分かる。


「す、素晴らしい! なんと美しいラインを描いているんだこの聖衣は!
あぁっあぁっ……この滑らかな曲線はまさしく芸術! なんて美しいんだろうか!!」
「なるほど。これが彼女の聖衣病か。」
「なんだよ、聖衣病って。」


アイオロスの小さな呟きにミロは苦笑する。
ナマエはぺたぺたと聖衣に触れる手を止めると、くるりと踵を返した。
そしてアイオロスの近くに駆け寄る。


「あの、アイオロス様!」
「ん、なんだい?」
「よ、宜しければこの聖衣を装着してはくれませんか?」


ナマエの要望にアイオロスが爽やかな笑みを浮かべて勿論だと頷く。
そして聖衣に手をかざした。途端、射手座の黄金聖衣はアイオロスの体に纏われる。
きらり、と聖衣がアイオロスと共に煌めくとほぼ同時に、はぁああとナマエの口から漏れた。


「あ、あぁあああ……。」
「おい、大丈夫か?」


この反応は初めてだ、とミロは思いながら両手を胸元で組むナマエを見る。
だが彼女の視線はアイオロス(正確に言えば彼が纏う聖衣)へと向かっていた。
ふらりふらりと彼女はアイオロスに近づく。


「す、凄い……! なんという輝きなんだ! 太陽の光を1人占めしているだなんて!
いや、むしろこの聖衣の為に太陽があると言っても過言ではなかろう!!
そしてまたなんというフォルム! この双翼こそまさに天馬の証!!」
「いや、天馬ではないからな?」
「は〜素晴らしすぎる! 聖衣とアイオロス様がとても相性が良く更に輝いてみえるぞ!!」
「は?」


彼女が聖衣以外に目が行ったのは初めてだ。
いつも聖衣に対しての反応しか示さないのに、今彼女はなんと言ったのだろうか?
ミロは自分の顔が引きつるのを感じた。


「アイオロス様!」
「なんだい?」
「私の心は射抜かれました! 貴方と、その聖衣に!!」
「はああぁああ!?」


アイオロスにぎゅ、と抱き着くナマエをミロは慌てて引き離す。
子どものように手足をバタバタさせてアイオロスにくっつこうとするナマエをミロはぎゅと抱きしめた。


「お、お前は何を言っているんだ!」
「だって、だって素敵なんですもの!!」
「だからって何故アイオロスに抱き着く! 聖衣ならまだしも!」
「聖衣に抱き着いてるじゃないですか!」
「明らかにアイオロスも含めていただろ!」
「だってアイオロス様素敵なんですものー!」
「おかしいだろっ!!」


2人のやりとりに、アイオロスは眉を微かに下げながら微笑む。
どうやら、その姿さえどうも魅力的に映ったようで。


「アイオロス様ーっ!」
「はっはっは、まいったなぁ。」
「ナマエーっ! 俺のはどうした!」
「さーじーたーりーあーすーっ♪」
「おい、聞け!!」
「はっはっは!」


恋を謳うには、あまりにも大きな壁が立ちふさがったようだ。



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射手座の聖衣も好き。いや、皆好きなんですけどね〜。

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