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モンスター退治の合間(3.5)


 ガウンッ、と銃が唸った。銃口の先にいたモンスターの頭部へクリティカルヒットし、モンスターは星へと還る。クラウドはバスターソードを背におさめ、私もまた銃をホルスターへとセットした。


「ナイス連携ね」
「ああ」


 すぐに肯定が飛んできて、思わず口元が緩んだ。


「クラウドの動きはしなやかで見ていて気持ちいいわ」
「戦闘専門だからな。越えてきた場数が違う」
「そうでした」


 ふと、また気配を感じた。ここら辺のモンスターは一掃したはずなのにどこに隠れているのか。すみやかに銃を取り出して、岩陰から飛び出したモンスターを撃ち落とす。一気にクラウドが距離を詰めて最後のトドメを刺した。


「……私たち、結構いいコンビだと思わない?」


 初めて戦った時から感じてはいた。非常に戦いやすいのだ。クラウドの動きに合わせて動くと、次の一手を望んでいた通りにクラウドが動いてくれる。だからスムーズに次の動作へ移せてそこへ重ねて追撃が落ちてくる。まさに息の合った連携。もう一人自分がいるかのような、心地良さ。


「あんたとは、どうも気が合うらしい」


 クラウドも同様に感じてくれていたらしい。ここまで戦い方で波長の合う相手というのは非常に珍しい。しかも同じ近接攻撃を得意とする者同士、下手すれば相手を傷つけるかもしれない立ち位置でも後ろからフォローがくると思ってしゃがむと本当に刃が頭上を通るのだから面白いものだった。


「戦闘が好きなわけじゃないけど、クラウドと戦うのは楽しいわ」
「遊びじゃない」
「分かっているけど……クラウドは、違うのかしら」
「……」


 無言は肯定。嬉しい、と小さく漏らすと視線を逸らされた。


「気になっていたんだが、その銃」
「これ?」
「ああ。初めて見るモデルだ。少なくとも神羅製ではないよな?」


 手にしていた銃をぷらんとぶらさげながら、頷く。


「これね、私のお手製なの」


 短く返すと、クラウドは驚いたのか目をほんのりを薄めた。唇から「すごいな」と素直な感嘆が届く。


「そう? 慣れるとそこまで難しくはないわよ。でも……この子たちを造るまでは苦労したわね。魔物が襲ってくる直前に暴発した時は流石に慌てたもの」
「不良品だな」
「その積み重ねで今の形があるのよ」


 もう一丁取り出す。


「剣は近中距離。銃で遠方をカバーか……」
「そ。女の一人旅は危ないからね」
「一人旅?」
「ミッドガルに来る前よ。一応拠点はいくつか設けてたけど、基本的にはふらふらしてたわ」
「流浪人ってことか?」
「そんなところ」


 銃をホルスターへセットする。辺りを見回してももう気配はない。


「なぜ?」
「なぜって……うーん……反抗期の延長線上、かしら」
「は?」
「ふふ、秘密。クラウドがもっと私に興味持ってくれたら教えてあげるわ」
「…どうでもいい」
「あら残念」


 歩き出したクラウドへ駆け寄った。クラウドの装備をちらりと見やっても、バスターソード以外は何もなさそう。遠距離の場合には魔法で対応しているのだろう。神羅兵である以上、銃が使えないというわけではないと思うけれど……。


「クラウドは銃扱えるの?」
「ああ、任務で使う機会も多かったからな」
「へぇ……じゃあ魔力も尽きて困ったら一丁だけ貸してあげる」
「あんたが倒した方が早そうだ」
「それもそうね。だったら、私が助けてあげるわ」


 あんたに助けられるのか? とでも言いたげな目に、薄っすら微笑んで返しておいた。すると何も返されずに視線をまた逸らされた。クラウドは思っていることを言葉に乗せないし、乗せたとしても皮肉や不器用が上乗せされて本心は掴みづらい。ただ、無表情そうに見える顔立ちは案外素直に変わっていくものだから、顔を見ていると分かりやすかった。


「この銃ね、弾丸でちょっと遊んでいるのよ」
「魔力を籠めているのか?」
「残念。薬品よ」


 マテリアの力を借りて属性攻撃するのが最もな使い方なんだろうけれど、私のは違う。銃弾の火薬にさまざまな要素の薬品を籠めることで効果を変えている。


「相手の動きを封じたり、麻痺させたり。本当は毒入りも作りたいんだけどこれは中々うまくいかなくて……」
「マテリアで何とかなるだろう」
「夢も現実もないわね」
「事実だ」


 考えながら作るのが面白いのに、と言葉を漏らすと「俺には理解できないな」と返ってきた。クラウドもやってみれば楽しさが分かるだろうけれど、そんな暇は残念ながら今はない。


「でも全てのマテリアを装備させるわけにはいかないでしょう? その点、銃なら弾を変えれば対応可能よ」
「リロードしている間に狙われたらどうする」
「そのための二丁。そのための剣じゃない」
「そうだったな」


 不意に、強い風が吹いた。砂塵が立ち込めて瞼を瞑る。ちくり、と痛みと違和感が走った。


「大丈夫か」
「ええ。…風強いわね。目にゴミ入ったかも」
「今のうちに取っておけ。いつ襲われるかもわからない」
「こんな状態じゃ、剣だろうが銃だろうが当たらないわね」


 何度か目を擦っていると、涙が浮かんでくる。その涙を拭うとすうっと瞳を痛みつけていたチクチク感が消えた。どうやら一緒に流れたらしい。


「……とれたみたい」
「そうか」
「奇襲遭わなくて良かったわ」
「出てきても俺が倒す」
「守ってくれるってこと?」
「倒すとしか言っていないだろう」
「あらそうでした」


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