TOX2 | ナノ

XILLIA2

25▽ ローエンとローエン

私たちを襲撃してきた男たち――プラートを、じじ様の精霊術が押さえ込んでいた。
じじ様は頼りがいのある私たちの旅の仲間だ。
でも、この感じはなに? 心がざわつく。


「ジュードたちの、仲間……?」
「なんでも知ってる、頼りになる人だよ。」
「カナンの地が、どこにあるかも!?」
「カナンの地……ですか?」


じじ様の抑揚のない声が、更に不安にさせる。
けれど、ジュード君たちは安心しているし、気のせいなのだろうか。


「そう、なんでも願いをかなえてくれる不思議な場所!」
「それは……」
「ふん、そんな場所があるなら願いたいもんだ。リーゼ・マクシア人を皆殺しにしてくれってな!」
「素手でこんなマネできる化物どもを、同じ人間と思えるか!!」
「……同感です。」
「え、」


じじ様の手が、男たちに向けられる。
途端に燃え上がる身体。響き渡る悲鳴。

――死の匂いが一瞬で、広がった。


「ぎゃああああっ!」
「ッ!?」


反射的にエルを抱きしめる。
こんなの、見せていいはずがない……!


「ローエン、何を!?」
「知れたこと。エリーゼさん、ガイアスさん、ドロッセルお嬢様……皆の仇を討つ。断界殻を消してしまった罪を、償わなければ……。」
「違う、この人は……!」
「そのお二人も始末しましょう。」
「ローエンじゃない!」
「どのみちエレンピオス人は皆殺しにするのですから。」
「ッ、エルとルルは下がって!!」


じじ様のただならぬ殺気があてられる。
本気だ、この人は本気で私たちを殺そうとしている。

――じじ様の姿をした、それでもじじ様じゃない存在。
異形の形をしたそれが突如として襲い掛かってきた。


「気を付けて、ローエンだけどローエンじゃない!」
「意味わかんなーい!」
「わかんないけど、本当だよ!」
「ッ、早……!」


向けられた剣先を回避した直後に精霊術が襲い掛かる。
なに、これ。まるで本物のじじ様と戦っているような……!


「ルドガー、じじ様は詠唱が早いの! ここは術を発動させないよう、ダウン狙いで行こう。」
「わかった!」


ルドガーは本当に器用だから、双剣から見事にハンマーに持ち替えて参戦した。
さっきイバルに使った時に思ったけれど、なかなか殺傷力があるね、それ。
きっとじじ様を怯ませられるはず……!


「セヴァートフェイト!」
「っぶな……!」


足元が光り輝いたと思えば、先ほどのあの攻撃。
何度も見慣れているが、本当にひやひやさせられる。


「っルドガーなんとかしてよー!」
「うおおおぉお!」


金色の光に包まれ、ルドガーの腕が、また変化した……!
やはり武器もハンマーから長槍に変化している。


「前みたいに、その槍がどうにかしてくれるのかな!?」
「わかんないけど、やってみるしかないよ! いける、レイア?」
「うんっ、平気!」
「なら――!」


ジュード君がじじ様の足元を蹴りバランスを崩す。


「いっくよー!」


レイアの棍が入り、体勢が更に悪くなったところに


「後味悪いけどッ!」


私の槍が肩を貫く。


「うぉおお!!」


そして、ルドガーの槍が、彼の胴を貫いた。
ヴォルトの時と同じくして槍先から光が溢れて、パリンッと割れるような音が響く。


「――……わ!」


そう、戻ってこれたのだ。
私たちの目の前には、私たちを襲ってきた男たちがいた。
生きている、彼らの姿。


「人間が消えるわけがない! 捜せ! どこかに隠れてるはずだ!」
「いっ、今なにをした!」
「精霊術ってやつか!?」
「やっぱり、リーゼ・マクシア人は化物だ!」


私たちに気付くと、再び銃口を向けてくる。
それにしても……私たちが"消えていた"?

あの時、じじ様ならざる者に殺された彼らが、今目の前にいる。
どういうことなのだろう。ただ時を遡ったというわけではないようだけど。


「そこまでだ。」


どちらにせよ、再び窮地に立たされていた私たちの目の前に、新たな人物が。
……この声、忘れもしない。男たち越しに見える影。


「なんだ、貴様らは――っひ!?」


男たちの銃が、あっというまに弾き飛ばされる。
たった数回刀を振っただけで、だ。相変わらず凄い……。


「一つ教えてもらおう。アルクノアは、なぜ源霊匣の素材を集めている?」
「お、源霊匣の暴走をテロに利用するんだ。力を利用した上に、その危険さをアピールできると……。」
「なるほど、策としては悪くない。」
「殺さないのか……?」
「俺は化物ではないのでは。」


男に向けられていた刃がおろされた途端、彼らは一目散にその場から立ち去った。
どうやら、助かったようだ。


「一朝一夕にはいかんな。」
「この街は、リーゼ・マクシア人への反発が特に根強いようですね。」
「カナンの地に願えば、うまくいくかも。」
「カナンの地?」


エルの言葉に、彼が反応する。
ルドガーの背後に隠れながら、それでも恐る恐る、エルは言葉を紡いだ。


「お願いをかなえてくれる不思議なところ……です。」
「ほっほっほ、夢のあるお話ですね。」


そう、柔らかく笑うじじ様――ローエンの姿に、エルとルドガーは小さく目を丸めた。
それもそのはずだろう。先ほど襲ってきたじじ様の姿をした者とは全く別なのだから。

そうだ、あのじじ様になかったのこのは茶目っ気なのだ。
だから尚更おかしいと感じたのかもしれない。


「でも、人の心を自由に変える力があるとしたら恐ろしいことです。」
「人が人である理由がなくなるのだからな。」
「大丈夫、本物だよ。」


ジュード君たちも察したのだろう。
にしても、偽物の後に本物が来ると、少し困る。
こう……ギャップがありすぎて。


「ありがと、ローエン。ガイアス。」
「アーストだ。」
「え?」
「今の俺は、一介の市井の男。ゆえにアーストと呼んでもらおう。」


果たして、どういうことなのか。
思わずじじ様に視線を移すと、にっこりと笑みを浮かべていた。


「エレンピオスの民衆の声を知るため、お忍びで行動されているのです。」
「それ、大丈夫なんですか? ガイアス王。」
「アーストだ。」
「王……王様!?」
「そうだよ、この人はリーゼ・マクシアの王様なんだ。」
「エル、王様って初めて見た!」


わくわく!
そんなエルの心情が、顔からよくよく伝わってくる。


「ありがとう、アースト。」
「それでいい。」
「意外と子どもっぽいこだわりがあるようで。」
「何か言ったか?」
「いえいえ。」


(ふふ、ガイアス王とお会いするのも久々だ!)
(エレンピオスの衣装も似合っているし)
(エルじゃないけど、わくわくしちゃう)




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