HAS | ナノ
⇒オマケ


あそこに変態さがなければ、魅力的な人だというのに……。
すっかり元通りになってしまった安室さんの株の変動に溜め息が漏れる。

何時まで考えていても仕方がない。そう頭を振って、エレベータに乗り込んだ。
胸に抱いたホットワインを早速家で1口飲んでから、お風呂にでも入ろう。
そして、今夜はぐっすり眠るのだ。

家の鍵を開けてリビングまで足を進め、すぐに荷を下ろした。
ワイングラスを取り出して、容器の口を開ける。
まだ温かなワインから、あの時と同じ薫りが漂ってきて思わずこれを吸いこんだ。


「明日、ウォッカ買ってみようかな……。」


そこまでお酒に強いわけではないが、せっかく教えてもらったのだから試したい。
明日の予定を頭の中で組んでいると、ふと自分のバッグが目に付いた。

あれ?


「……なにこれ。」


バッグから顔を出していたのは、四角形のラッピングされた箱。
掌にちょこんと乗っかる程度の大きさで、重さもさほど感じない。
明らかな赤と緑のクリスマスカラーの包装紙に、淡いピンクのリボン。
そのリボンの下には、小さなメッセージカードがさしこまれていた。


――『ささやかながら、クリスマスプレゼントです。安室』


そう書かれただけのカード。
まさか、安室さんからプレゼントを貰えるとは……。
というか何故、バッグに入れたの。直接渡してくれればいいのに。

手は早速リボンの端を掴んでいた。
しゅるりと弱い力で解けたリボンを避けて、包み紙を丁寧に開けていく。
すると、真っ白なケースが露わになった。


「……。」


こうなっては好奇心が大いに勝る。
どきどきと蓋を手にして、ゆっくりとそれを持ち上げる。


「……時計……?」


英数字が描かれた文字盤の、ピンクゴールドがいち早く目に着く。
続いて、美しい円形状のデザインと煌びやかなシルバーの煌めき。
ベルトは文字盤と同様のピンクゴールドが中心に太く線を引いており、その間をシルバーが囲んでいる。
手に取ってみると、非常に軽い。けれど、決して安物ではないだろう。


「いや、え?」


ふと目についたブランド名に目を見張る。
失礼な行為であると重々承知だが、スマホを片手にサイトからこの時計を探してみた。
結果、すぐさま発見することができた。というのも、新発売のものだったからだ。
値段を見てぎょっとする。一瞬勘違いかと目を擦ってみても、値は変わらない。


「……。」


なんと。
デザインは非常に可愛らしく、使い勝手も良さそうで個人的にも好きな時計だ。
けれどさすがにこれは……。


「でも、買ってもらったものを返すのは一番失礼だよなぁ。」


試しに腕に嵌めてみると、恐ろしいくらいフィットした。
なんだろう。これが高級時計の力なのか。


「……お返し、何にしようかな。」


きっと安室さんは気にするなと微笑むのだろうが、そうはいかない。
だからといって返却しようにも頑なに受け取ってはくれないだろうし、そもそも失礼に価してしまう。
ならばありがたくここは頂いて、お返しに力を注ごう。


「……でも安室さんって、何が好きなんだっけ。」


少々、逡巡してみてもコレといったものは浮かばない。
好きなものも、今欲しいものも、何も。

さて困った。
グロッギに口付けながら、ピンクゴールドの輝きを放つ腕時計にうっとりと目を細めた。


.
本当は、本編最後の「クリスマスパーティを終えてから〜」がオマケだったのです(笑)
そうなると本編の安室変態度が0だったので、無理やりオマケ分を本編に突っ込みました。



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