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Origin.


お邪魔しています、ガンダラ要塞

「む、ここも行けない……!」


あれから行ける道を探して進んではいるんだけれど、カードキーがないと進めない場所ばかり。
部屋に入るためのキーさえあれば、あるであろう通気口とか通っていけると思うんだけど。


「なーんであなたたち、持ってないの。」


足場に倒れている数人の兵士――。
もちろん襲われたのをやり返しただけなのだが、彼らは誰もキーを所持していなかった。
もしかして、下っ端中の下っ端に当たった? 全員所持しててよ……。


「そもそも、ここどこ。」


歩き回って分かるのは、兵士と同じように何らかの装置がたくさんあるってこと。
後は、なんだか備えがしっかりしているかな。行けるところは物置ばかりで。
食材も多いし、なんだか工場にも近い気がしなくもない。
もちろん、製造するような機械が見当たらないから違うのだろうけれど。


「見つけたぞ!」
「っやば、」
「取り押さえろ!」


いかんせん、ここは敵が多くて身動きが取りづらい。


「ああもう!」


先程からいったいどれだけ戦っているのだろう。
1人に対する多勢には慣れているし、そのための槍ではあるけれど。
数の暴力だ。

鍛えている身体も疲労は覚えるし、口はグミを欲している。
食事はあるのにグミが1つもないだなんてどうかしているよココ…!


「っは、……んのっ……!」
「ぐぁああっ、」
「増援だ、増援を呼べ――っぐぁ、」
「誰が、呼ばせるかってー……のッ!」
「うぐぁっ!」


まるで虫のように湧いて出てくる。
例えからして気持ち悪いのに、実際これが人となると更に気持ち悪い。

それにしても、いちいち槍で致命傷を与えるのは厳しくなってきた。
もっと確実に一度で相手を撃破する方が効率がいい。


「ウザいからさ、…もー落ちろって!」


私は常に隠している方の脚――ミニバッグが無い方に手を忍ばせた。
そしてホルダーからそれを抜いて、相手に構える。


「一発で沈んで!」


引き金を引く度に、大きな音と共に次々の兵士は横になった。


「……、……。」


血だけが飛び散ったこの部屋に、ただ1人立つ。


「……もっと、鍛え直さないとね。」


最近は油断ばかりしている気がするし、1人で戦う力ももっと身に着けないといけない。
まさか、こんなに軍隊さんと戦うだなんて、思ってもみなかった。


「――!」


微かに足音が聞こえた。扉の先に誰かいる?!
まだ兵士がうようよいるって、……本当にここどこ!


「……槍で一突き、これでいけるよね?」


手にしていたそれを、ホルダーへとしまう。
そしてまめだらけの手で槍を握りしめ、構える。

扉が開いたら、槍一突き。


扉が開いたら、槍一突き――!!


――……


「あー……危なかった。」
「それはな、俺の台詞だ!」


槍で一突きしようと思ったら、なんと扉が開いた先にいたのはアルヴィンだった。
慌てて軌道を変えたから、彼の顔すれすれを掠ったってわけ。
目を真ん丸に見開いたアルヴィンの表情は傑作だったが、
彼からしたら矛先の恐怖と私の焦った表情がきっと忘れられないことだろう。


「ったく、それにしても無事なようで安心したぜ。」
「ナマエさん、怪我はない? 今治療するから動かないでね……。」
「あ、ごめんね。」
「本当に、良かった……会えて良かった、ナマエさん……。」


ジュード君……心配、かけちゃったよね。


「うん、私もジュード君とまた会えて嬉しいよ。ありがとうね、来てくれて。」
「俺にはないわけ。」
「ありがとーアルヴィン君。」
「はいはい、棒読みアリガトウ。」


肩の力を抜いてその場に座り込む。
あーもう、飛び降りた時の足の痛みが地味に響いているかも。
あれだ。痛みが引いたまま敵の装甲を蹴ったりしてたから悪化したのか。

溜め息が自然と漏れたら、じじ様がグミをくれた。
ありがとう。凄く欲しかったところです。


「ナマエさん。あなたはお1人でここまで逃げおおせたのですか?」
「そう。ミラたちとは別の部屋に閉じ込められてね。」


閉じ込められたって言うのもなんだか語弊だけど。


「に、しても。よくここまで来れたな……周りは呪帯だらけだってのに。」
「飛び降りた。」
「は?」
「飛び降りたの。」
「…………。」
「…………。」
「いたたたたっ!?」


あちょっ、アルヴィン小突かないでよ!
いててててジュード君まで患部叩かないで!


「ですが、どうしてナマエさんだけ別の部屋に? それも牢ではなく。」
「分からない。けどジランドってあの銀髪の男が、私とお話したかったみたいよ。」
「!、何を話したんだ?」
「私や両親のこと聞いてきたり、『私を知っているか?』なんて聞いてきたり。」
「お前、そいつのこと知ってるのか。」
「まさか。屋敷から出てきたのを見たのが最初。むしろこっちが聞きたいくらい。」


というか、なんだかアルヴィンやけに聞いてくるね。
むしろアルヴィンの方が、ジランドを知っているような印象受けるんだけれど。


「はい、終わり。痛むところはない? 大丈夫?」
「うん。本当にありがとう、ジュード君。」


痛みは微かに引いているって感じだけれど、やっぱり足がジンジンするなぁ。



(さてと、それじゃ先に進もう。)
(うん。ミラたちを探さないと…!)
(呪帯には、十分に気をつけましょうね。)
(そうだ。ところでここってどこなわけ?)
(えぇ?! し、知らなかったの…?)
(ほっほっほ、ここはガンダラ要塞ですよ。)
(……マジか。)

(ジランドが、ナマエを知っている……?)
(つーか、あの音って……。)

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