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Origin.


 最終的には……


「…………。」
「ん? どうした、ナマエ。」
「ナマエさん? もしかして、具合でも悪いのですか……?」
「え? いや、そういうわけではないんだけど……。」


ナマエはどこか引きつった笑みを浮かべながら片側にいる氷河にそう返した。
そんな彼女の様子をじっと見つめていたカミュが、彼女を挟んだ方向にいる氷河に視線を移した。


「……ふむ。氷河、彼女のためにベッドを整えてあげなさい。」
「…カミュ、それは貴方がした方がいいかと思います。
ここは貴方の家ですし……何より、俺はナマエさんが心配なので。」
「氷河よ、それは私もまた一緒だ。…お前と共に居させるのが、な。」
「……それは俺のセリフです。」
「…………。」
「…………。」
「(うわーん、2人に挟まれているのが居ずらいだなんて言えないよ〜!)」


ナマエは心の中で嘆く。
その言葉のとおり、今彼女はカミュと氷河に挟まれるようにしてソファに位置していた。
氷河が遊びに来てから、ずっとこの状態である。

普段は暑苦しいほどにその師弟愛を見せつける彼らだが、どうにもナマエの目前、それは無いにも等しくなるようだ。
現在の状況から見て、ナマエを挟み、両者睨み合っているようにも見える。


「…あの、大丈夫だから、ね?」
「……そうですか? まぁ、ナマエさんがそう言うなら……。」


ナマエはあははと苦笑しながら氷河に返した。


「そ、そういえばそろそろ昼食の時間だね!」
「…もうそんな時間か。」
「気づかなかった……。」
「ふふ、じゃあご飯にしましょう?」


些か挟まれて困りはするが、それでもナマエは2人に愛おしさを感じ微笑んだ。
そして、ゆっくりと席を立った。次いでカミュと氷河も腰を上げる。


「あ、2人はゆっくりしていて? 私一人で作るわ。」
「そんな、ナマエさんだけに任せておくのは……。」
「氷河は客人なのだから、座っていてちょうだい。」
「……分かりました。ありがとう、ナマエさん。」
「さ、カミュも…、」
「いや、私は共に行こう。以前仕入れをして以来、いろいろと物の置き場所が変わったのだ。」
「…そうなの? それじゃ、お願いしようかな。」
「あぁ…さぁ、行こう。」


カミュはやんわりと頷けば、ナマエの背中に手を当て、優しく前進させた。
ナマエは氷河の方へと顔を向ければ微笑み、待っているようにと告げる。
告げられた本人は、些か不満げな顔をするも、彼女の言いつけを守ろうと頷いた。


「あれ……?」


台所に立つと、ナマエは違和感を感じた。
先ほど、カミュは器具の位置や調味料などの置き場所が変わったといっていたのだが、見た感じ何も変わっていなかったのだ。
振り返り訊ねようとすると、背中に温もりを感じた。


「っ…か、カミュ!?」
「やっと二人きりになれた……。」
「っ〜〜!!」


背中にべったりとくっつき、お腹に回されたのはカミュの手。
ナマエはその腕に自らのを当てながら、頬を染め顔を俯けた。


「だ、ダメだよ……氷河くんがいるんだから。」
「氷河が来るのは嬉しいが。どうも貴女がとられる気がしてな…。」


カミュはナマエを抱きしめる力を少しだけ強くした。


「もう……私は、ずっとカミュのそばにいるよ?」


顔を少しだけ後ろに向ければ、カミュの顔が近くにある。


「っ……あの、…だから、その……。」
「…ふ、……さぁ、昼食を作ろう。私も手伝う。」
「……うん…。」


ナマエは未だ頬を染めながら、カミュと共に昼食を作り始めた。




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