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Origin.


 黒い世界の中で


「……。」


真夜中、遺跡のコアを巡る旅で疲労しきっている光牙たちは熟睡していた。
そんな最中に静かに瞼をあけたのは、ナマエだ。

一見、青年にも見える彼女は確かに女性であり、あの伝説の青銅聖闘士 鳳凰星座の一輝の義娘であることで有名だった。
どういう経緯かは定かではないが、彼女は彼の聖衣を受け継ぎ、鳳凰を守護星座としている。


「……寝てるな…。」


ナマエは、他の者が起きないようにとゆっくり体を起こし、立ち上がった。そして辺りを見回す。
暗闇の中、静寂に包まれた森にただ1人。なんとも言えない気持ちがこみ上げてきた。


「……はぁ。」


ナマエは溜め息を吐くと、足音を極力立てぬよう歩き出した。
と、今まで感じなかった気配を感じ、足をすぐさま止める。


「どこへ行く。」
「なんだ、栄斗か…おどかすな。」


木の枝に立つ栄斗。常に神出鬼没な彼に、またかとナマエは再度ため息を吐く。
栄斗はくいっと眼鏡を上げ、再度問うた。


「こんな夜中に、何処へ行くつもりだ。」
「何処へだっていいだろ。…ボクだって1人になりたいときくらいある。」
「……あまり遠くへ行かない方がいい。不吉な小宇宙が感じられるからな。」
「あぁ、わかったよ。」


ナマエは栄斗の言葉に頷けば、その場から去った。

暫く歩けば、森を抜け海が視界に入った。海とはいえど、この真夜中。
月もその姿を雲に隠しているために、ただの大きな黒い世界にしか見えなかった。
ナマエは崖から誤っても落ちない程度のところで足を止め、前を見据えた。


「…真っ黒だな。」


どこか嘲笑うような口調でそう言う。


「……マルスたちの手にこの世が落ちたなら、こんな世界になるのか。」


ナマエは手を前に出した。その手は目の前の黒い世界に飲み込まれる。


「……そんなこと、絶対にボクがさせない。」


ボッ、と黒い世界に灯が煌めく。
ゆらゆらと揺れ動く赤い炎をナマエはじっと見つめそう呟けば、瞼を閉じた。


「だから、……君がボクたちの邪魔をするというならば、容赦はしない。」


ナマエの背後に立つ影が揺れる。


「……ボクは、義父さんの愛したこの大地を。
……義父さんの、その仲間たちと守ったこの世界を、守る。
そのために聖闘士となったのだから。」


だから、


「邪魔立ては、赦さない。」


その言葉に共鳴するかのように、揺れ動く炎が激しく燃え盛る。
ナマエはゆっくりと後ろを振り向き、影を睨みつけた。


「のこのこボクの前に来るだなんて……そんなに早く死にたいか――オリオン。」
「……この僕がお前如きにやられるわけがないだろう。」


ぎっと睨み合う双方。その小宇宙は先ほどの炎のようにゆらゆらと揺らめいていた。
聖衣を纏わずに目の前に現れたエデンに、ナマエは無性に怒りを感じ始めていた。




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