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 甘い蜜に誘われて


「…ん……んぅ……………あれ?」


きらきらと輝く太陽。その陽射しが人馬宮に入り込んできた。
ゆっくりと明るくなる人馬宮内。その陽射しは、宮主の部屋にまで届いた。

アイオロスは陽射しの眩しさで目を覚ます。
目を擦り眠気を吹き飛ばせば、ふと違和感を感じた。
体を起こし辺りを見回す。何の変哲もない自分の部屋。だが、何かが足りない。
アイオロスにはそれが何なのか分かっていた。


「もう起きたのかな?」


アイオロスはそう口に出し、多分あそこだろうとベッドから起き上がった。

そして向かった先は、人馬宮の裏口。
そこへ行くと、やはり彼女はそこにいた。


「…………。」


自然と口元が緩む。視線の先には愛おしい彼女。
目の前にある花壇にて花に水をやっている。これは彼女の日課でもあった。
いつからだったか、アフロディーテとの交流の最中、彼女も花を愛でる楽しさを知ったらしい。

アイオロスはゆっくりと彼女に近づいた。それに気づいた彼女は、彼に微笑んだ。


「おはようございます、ロス。」
「あぁ、おはようナマエ。今日も花たちは綺麗に咲いているんだね。」
「ふふ、そうでしょう? だって私の気持ちがこもっていますもの……なんて。」


少しおちゃめに笑うナマエに、次いでアイオロスも笑みをこぼした。


「いや、君の気持ちはこの花たちに届いているさ。」
「え?」
「でなければ、こんなにも美しく咲きはしないだろう?」


アイオロスはナマエの隣に並ぶと、水を受けて生き生きと輝く花を見つめてそう言った。
アイオロスの言葉に、ナマエは首を傾げるも、すぐに綺麗に微笑んだ。


「ロス……ありがとうございま――」
「敬語。」
「ぁ……、」


アイオロスは薄く微笑みながら、彼女の口元に指を当てた。彼女は眉を下げる。


「君ともっと打ち解けたいと思うのは、私のわがままなのだろうか……?」
「ロス……ごめん…。」
「いや、君が誰に対してもそうなのは知っている。
…だからこそ私は君に惹かれ、こうして愛おしいという気持ちにまでなっているのだから。」
「っロス……。」


そっと包み込むようにナマエを抱きしめると、案の定彼女は顔を真っ赤に染めた。
アイオロスはそんな彼女の様子にくすりと笑えば、


「恥ずかしいのかい?」
「……うん。」
「離してあげない。」
「ロスっ!」


アイオロスは優しくナマエを抱きしめたまま、また笑った。ナマエは顔を俯けた。




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