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 あなたの背中に愛を


夕暮れの白羊宮。
そこの宮主であるムウは1つ息を吐いた。目の前にある輝く聖衣を見つめる。


「あともう少しですよ…。」


完全なる修復を待ちわびるかのように輝く聖衣を一撫でし、ムウは席を立ち、リビングへと部屋を出た。

リビングにあるふかふかの大きなソファに座る。
自分と貴鬼ともう1人が座れるようにと買ったソファである。もう1人とは――。


「はい、どうぞ。」
「ナマエですか。」
「えぇ、ナマエです。お仕事お疲れ様、ムウ。」


手の目のテーブルにカップを置いたのは此処の女官であり、ムウの大切な女性とも言えるナマエである。
ムウ同様に落ち着いた雰囲気を醸し出した彼女は、自らも同じカップを持ち、ムウの隣に座った。ソファが沈む。


「ありがとうございます。けど、後もう一仕事残っているんです。」
「あら、そうなの? 珍しいわね、作業を中断させて戻ってくるなんて。」
「そうですか? ……貴女との時間も大切にしたいですからね。」
「気にしてくれていたのかしら? それは嬉しいわね。」


ナマエは優雅に微笑めば、コーヒーの入ったカップを口にした。
普段は作業を開始したら終わるまで自室から出てくることはないため、今回のムウの行動に少しばかり驚いたようだ。


「今晩中には終わりますから。」
「無理はしないでね。もうこの体は、貴方だけのものじゃないんだから……。」
「えぇ、わかっていますよ。ありがとう。」


ナマエはムウの肩に自らの頭を乗せ、微笑んだ。
ムウもまた、微笑み返した。だがその微笑みはどこか切なさを帯びている。


「貴女にはいつも迷惑をかけてしまいますね、ナマエ。」
「迷惑だなんて思ったことないわよ。何より、ムウの力になれて幸せよ。」
「ナマエ……ありがとう。」
「もう…貴方がそんな顔してたら、皆吃驚するわ。」
「!、……そうですね。」


ナマエは微笑みながら、ムウの頬を突っついた。
ムウはそんなナマエの行動に、頬をほころばせる。


「ありがとうございます、ナマエ。」
「ふふ…ムウってば、さっきから礼を言ってばかりよ。」
「それほど貴女に感謝しているということですよ。」


ムウは微笑みながらコーヒーを口にする。多少の苦みも、どこか甘く感じられた。




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