頂き・捧げもの | ナノ
貴方の全てを愛してる
「ただいま」
「ただいまなのだ!!」
日も傾き、夕日で家の中が赤く染められ始めた頃、ガチャリという扉の開く音と共に、私の愛しい人である貴鬼とその弟子である羅喜ちゃんが家へと帰って来た。
「2人とも、おかえりなさい」
私は玄関へと向かい、微笑みながら2人を迎え入れる。
「少々早いかもしれませんが、夕食の支度はできていますよ」
「すぐに食べたいのだ!
もう私はお腹ペコペコなのだ!!」
私が言うと、羅喜ちゃんが間髪入れずに返してきた。
私は、早く早くと急かす羅喜ちゃんを微笑ましく思いながら見た後、後ろに佇む貴鬼を見た。
貴鬼は私と同様に羅喜ちゃんを微笑みながら見ていた。
「ほら羅喜。外から帰ったんだ。夕食の前にする事があるだろう?」
貴鬼が諭すようにそう言うと、羅喜ちゃんはハッとして
「!そうなのだ。まずは、手洗いとうがいなのだ!!」
パタパタと手洗い場へと駆けて行った。
そんな羅喜ちゃんの様子をしばし貴鬼と私は眺めていた。
「さて、では私は夕食の仕上げをしてきますね」
私がそう言って台所へと向かうと、貴鬼も自らの支度を整える為自室の方へと消えて行った。
夕食の間は羅喜ちゃんが今日の事を楽しそうに話していた。
今日の聖衣修復の素材調達を兼ねた修行の事その途中で見聞きした事……。
沢山、沢山話してくれた。
どうやら今日は珍しく市までよって来た様で、羅喜ちゃんの目がいつもの数倍輝いている。
「市にはいろんなものが売っていたのだ!!」
私が「そうですか」と笑いながら応えると、羅喜ちゃんは「そうなのだ」と言いながら自分のポッケをいじり出した。
私が頭に?マークを浮かべてそれを見ていると
「それで、これをナマエさんにあげるのだ!!」
そう言いながら、羅喜ちゃんはポッケから可愛らしい髪留めを取り出した。
桜をモチーフにした美しい飾りがついた髪留めだった。
私が呆気に取られて呆然としていると、羅喜ちゃんが心配そうに
「嬉しくなかったのだ?」
と尋ねてきた。
その一言で現実に引き戻された。
「!!
いえ、とても嬉しいですよ。
ただ、お土産を頂けるとは思っていなかったので、驚いてたんです」
私がニッコリと笑うと、羅喜ちゃんは嬉しそうに笑い返してくれた。
「喜んでくれて良かったのだ!!」
「ふふふ、ありがとうございます、羅喜ちゃん」
今日の食卓は、笑いが絶えなかった。
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