頂き・捧げもの | ナノ

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 貴方の全てを愛してる



その後、夕食の後片付けを終え、羅喜ちゃんはお風呂へ入りに行った。


そういえば、貴鬼は仕事があると言って自室にこもりっぱなしである。

(お茶でも差し入れようかしら……)


そう思い、私はお湯を沸かし始めた。




コンコンと貴鬼の部屋の扉をノックする。

「失礼します。お茶などいかがですか?」

私は貴鬼の部屋に入り、ティーセットを乗せたトレイを軽く掲げながら彼に問う。

すると、沢山の書類と睨めっこしていた貴鬼は顔を上げ、わずかに微笑んだ。

「ああ、頂こう。
わざわざすまないなナマエ」

「いえ。これくらい貴方の仕事と比べれば苦にもなりませんよ」

そう言いながら私は、お茶を淹れる。

「どうぞ」と言って、彼の執務机にカチャリとカップを置く。

「熱いから気をつけてくださいね」

「ああ、分かっているさ。私もいつまでも子供ではないんだから」

私がわざとそう言うと、彼も笑いながら返してくれる。



(子供じゃない、か……)




私と貴鬼は小さいことからの付き合い、つまりは幼馴染だ。

どちらが告白したとか、そういうこともはっきりとはなくて、
こうやって彼と付き合う様になったのも、ごくごく自然なことだった。




だから、彼の師匠であるムウ様が亡くなった時は、とっても悲しかった。
あの人が居ないだけで、毎日が全然違って。

いつもなら、私が止めたにも関わらず、貴鬼が悪さをしてムウ様に怒られていたのに、
怒るムウ様も居なければ、悪さをする貴鬼も居なかった。

……あまりのショックで、貴鬼には悪さをする気させ起きなかったらしい。


ムウ様が亡くなって暫くすると、貴鬼は髪を伸ばし始めた。
話し方も今までのやんちゃな感じではなく、落ち着いた、まるでムウ様の様な話し方に変わった。
背もぐんぐんと伸びていき、
いつの間にか見上げるようになった。



「寂しく無かったか」と問われれば、私は「寂しかった」と答えるだろう。
大切な人を失って、ずっと隣にいた人も変わってしまって。
何だか、置いてけぼりにされた気分で……。




「ナマエ?」

貴鬼の声で私はハッとする。
いけない、いけない。今は感傷に浸っている場合では無かった。

「すみません、ぼーっとしてました」

「いや、別にそれはいいんだが。もし、疲れているならしっかりと休養を取ることを進めるが?」

「いえ、本当に大丈夫ですから」

私が微笑むと、貴鬼は「そうか」と言って席を立った。

「……?どうかいたしましたか?」

急にどうしたのだろうと尋ねてみれば、貴鬼は小さな箱を持って私の前に佇んだ。






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