頂き・捧げもの | ナノ
貴方の全てを愛してる
私の前に立った貴鬼は、はぁとひとつ深呼吸すると、意を決した様にまっすぐと私を見つめた。
「これを受け取って欲しいんだ」
そう言いながら、手に持つ箱を開ける貴鬼。
その中には、綺麗な指輪が入っていた。
私が本日二回目の呆気に取られていると、貴鬼が焦れた様に
「まさか、ここまできてもこれが何か分からないとか言わないよね」
と言って、少しジトっとした目でこちらを見てきた。
「え、ああ!!いや、意味は大体予想がつきますが、余りにもいきなりだったものですから……」
私がアタフタしながら貴鬼を見れば、貴鬼の頬は少し赤く染まっていた。
「貴鬼、照れてるんですか?」
面白くてつい、そう尋ねると
「なっ!?べ…別に照れてなんかないやい!!」
「あ、懐かしいですね。その話し方」
貴鬼は相当照れているのか、口調が昔の様になっている。
それが微笑ましくて「ふふふ」と笑ってしまう。
「……別に照れてない」
「あら、別に言い直さなくても良かったのですよ?」
私がからかうと、貴鬼はむすっと不貞腐れてしまった。
その仕草が余りにも可愛らしいものだったので、また私は笑ってしまう。
「……それで、返事はどうなんだい?」
私が一通り笑い終えた頃に、貴鬼が尋ねてくる。
私は、今までで一番の笑顔を彼に向ける。
「そんなの決まっていますよ。私は貴方を"愛しています"」
答えると同時に私は、暖かいぬくもりに包まれていた。
笑った顔も、怒った顔も、照れた顔も、驚いた顔も……
他にも沢山あるけれど、やっぱり 私は、貴方の全てが愛おしい。
End.(next.お礼コメ)
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