空は青
白い墓石が日差しで溶け出したのではなかった。新緑に流れるヴェールに草が、…花が透けている。
「ニジ」「帰るぞ」「だめ」「なんだと」
舌打ちをしてその場で片手を差し出せば名前は少し歩み寄っておれの手をとったが、今度は腕を引っ張られた。足が動いて、二人して馬鹿みたいに墓石を見上げる。
なんだ?空が青かった。
「お母さんにありがとうって言いたくて。ほら、ニジも」「意味分かんねェ」「変な意地張らないの」「はあ?」「私の力くらいでニジが引っ張られる訳ないよ」
おれの肩にそっと寄り添った名前は多分、満足気に笑っている。畜生。ヴェール越しに名前の耳を塞ぎ、やけっぱちで声を張った。おれたちは今日結婚する。
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