ボードゲームはままならない




巨鳥は李依を乗せて空へ舞い上がる。戦況のよく見える空中から、指示された“役目”を果たすために李依は新手の魔道士を見つめた。

「……ルフレ、ブラーレイヴン、緋炎……」

厄介な敵だ、と思考は判断する。彼の実力は魔道のみならずその思考と判断力。

だが向こうはルフレと手負いのタクミの二人だけ。
マージは倒されたものの、こちらには無傷のアーマー、ナイト、ペガサスナイト。タクミはあと一撃加えれば倒れる。そうなってしまえば残りはルフレひとり。
まずはタクミから排除してしまえばいいだろう。

「……ペガサスナイト、前へ」

弓を相手取るには分が悪いため、後ろに控えさせていたペガサスナイトを呼ぶ。
素早さが高く先手をとれるペガサスナイトなら残り体力僅かな弓兵を任せられる。たとえ至近距離での反撃を有するタクミであっても、初撃で倒せば驚異ではない。
そうすればあとはルフレだけ。アーマーとナイト、ペガサスナイトの三人がかりで仕掛ければ良い。

勝利を確信し──そして疑問が浮かぶ。
なぜルフレはこのタイミングでなんの策もなく飛び込んできたのか?そしてなぜ何も指示を出さないのか?

「……」

いや──それでも勝ちは揺らがない。ここでタクミは地に倒れ、ペガサスナイトとアーマー、ナイトの三人がかりでルフレを討つ。
勝利のビジョンを結論付けて李依はそこで思考を止めた。

しかし、地に倒れ伏したのはペガサスだった。