はじめまして召喚師服/依頼人を知る



ローブは軽く薄い生地で、羽織ると太股まで広がった。その裾や袖まわりには何本かの金の帯が程好いアクセントとして走っている。インナーの襟詰は水色で、全体的なカラーリングは絵倉くんと同じ。大きく違うのは、ズボンではなくキュロットにブーツということだ。
オボロは胸を張り、ふふんと自慢げに鼻を鳴らした。余程の自信作らしい。


「重たくなくて通気性のよい素材よ。満足かしら?」
「すごく……要望通りです……」

重たくて暑そうだから嫌だ、という私の非難点を確実に改善。カジュアルかつ着やすいかつ動きやすい。
一番の問題だったコスプレ感だが、異界の英雄達と並ぶと私の軽装は非常に浮いてしまい、私にとっての普段着がコスプレっぽく見えるという悲しい逆転現象が起こっていた。なのでこの程度の服装なら十分妥協点。流石にもとの世界では着られないが、アスクにいるぶんには馴染めるだろう。

「ええっと、ありがとう……オボロ」
「お礼を言うのは私もね。
暗夜風の召し物はあまり触れたことがなかったけどあまり難しい型じゃなかったし、いい勉強になったわ」
「オボロは裁縫師になりたいの?」
「ええ。いつか両親のような呉服屋になるのが夢なのよ」
「じゃあ絶対なれるね。すごいよ、普通に売り物だもん。大切に着るね」
「ありがと。でもタクミ様にもちゃんとお礼を言いなさいね」

私とオボロの会話に唐突に出てきたタクミくんの名前。脈絡が分からなくて首を傾げる。

「タクミくん?なんで?」
「私はタクミ様にあなたの服を見立ててくれと頼まれたのよ!あなた、知らなかったの?」
「……へ」

タクミくんが、私に?
仕立てられた服に改めて視線を落とす。
素直じゃない彼が、私のことを考えてここまでしてくれた。私が一方的に仲良くなった気になっているんじゃなくて、ちゃんと友好関係を築けていた。その証。友人とはいえ、異性から服を贈られるのは初めてだ。
初めて知る事実たちに、嬉しいような、恥ずかしいような気持ちがじわじわと奥底から沸き上がってくる。タクミくんの優しさにうっとりするオボロの誉め言葉が、遠く聴こえた。