強引なるようこそ




刹那。
空気を切り裂き音を置き去り、頭上を突き抜けた一矢。それは私の目の前で斧を振り上げていた男の首元に突き刺さる。動きが止まった男と数瞬見つめあう。お互いに何が起こっているのか解らなかった。
襲い掛かる男と襲われる私のそんな奇妙な連帯感は、続けて放たれたもう一矢が同じように斧男の首元に突き刺さった事で終わる。斧を取り落として、男は仰向けに倒れていく。ただただ目の前の光景を見つめるしかできない。そんな呆然とへたり込んだままの私の背後から、男性の声が聞こえた。

「――僕の力が必要なの?全く、仕方無いね」

やや高圧的、勝ち気な声音。声の主を振り返る。
声に違わない、強気な瞳と目が合った。その手には彼の背丈と変わらない程の弓が握られている。襲いかかって来た男を撃ち倒したのは彼らしい。

「誰…?」
「僕を喚んだのはあんただろ?」
「……」
「なんだよ、人の顔をじろじろ見て」
「あ…ありがとう?ございます?」
「なんで疑問なんだ」
「いや、何が起きてるんだかついていけなくて…」

丸く穴の空いた石碑のある広間。天井は無く、頭上ではやけに近い青空が、足元には石床が広がっている。

「あー、悪いんだけど」

と、第三者の声。二人でそちらを向くと、Tシャツにジーンズというラフな格好の青年が立っている。馴染みのある庶民的な格好の中で、彼が手に持つ銃だけが浮いていた。

「タクミ、でいいんだよな。お前を喚んだの…たぶん、俺?」










李依
絵倉と同時に召喚された現代人。召喚された矢先ヴェロニカの仕向けた敵に襲われかけるが、間一髪絵倉により喚び出されたタクミに助けられる。

絵倉(エクラ)
大学生〜社会人の青年。真っ先に神器“ブレイザブリク”を使って見せたため召喚師認定された。




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