カゼマル君ったらもう!声掛けて来るなんて考えてもみなかった…。一言も喋れなかったし!おかげで1週間ドキドキしぱなっしで目と耳と脳が更に冴えちゃったよどうしよう!しかもドキドキのし過ぎで陸上部行けなかったしね!
あっあとこの1週間でご…ごんえい、じ…?とかいう転入生が来てまあイケメンだったけどまあ私には関係の無い事だったね!


という事で、まだ心臓がバクバクしてて血流とかやばいんだけど、まあちょっとは収まったから陸上部に行こうと思う。脈が速い人って早死にするらしいね。


「……あれ?」

いつもは遠くでミヤサカ君と走っているはずのカゼマル君がいない!練習見学に来てる人も減ってきてるし…。
はっ…も、もしかして、私が木から落っこちたから!?「やばいぜあの見学に来てるこの間木から落ちた奴。あいつのせいで部活真面目に見学出来なかったっつーの。いつもいつもわめき立てて迷惑なんだよ」的なノリで!?えっそんなにわめいて無いよ!

ちょっマッハ!業務連絡業務連絡ー!カゼマル君はいずこ!?
ちっあいつ聞こえて無いし…。幼馴染みの心の声にくらい耳傾けろや!

マッハ君聞こえてますか?カゼマル君はどこですかねぇ、ちょっと聞いてますぅ?
やーんカゼマル君がいないなんて私陸上部来る意味無くね?まあ良いや今日くらいは見ててやろう。

わたしが心の底からっていうか肺胞が潰れるんじゃないかってくらい思いきりため息を吐いて例のあの木の幹に腰掛けていたら、あらまあ話した事は無いけど見慣れた彼がすぐ近くを横切った。


「………」


…聞かないよ!カゼマル君の居場所なんて聞かないよ!ミヤサカ君の表情だって暗かったし。重い雰囲気苦手なの。


「…どうしよう」


もう何、私はもう走っているカゼマル君を見れないの!?授業中はまあ見れるから良いけど、私は走ってるカゼマル君が見たい!
せめて何があったのかだけでも誰かに聞こう。もしかしたら今日は休みってだけかもしれないし。授業には出てたけどね。

同じ女の子に聞こうと思い、でも走ってる子に話しかけるのは何か気が引けるっていうかうーん…。
あっ!マネージャーの子に聞こう!

近くにボードを持ったマネージャーと思われる女の子2人を見つけたので、立ち上がってその子たちの方に歩き始めた、ら。

女の子たちは私の存在に気が付いたのか、「あの子ってこの間木から落ちた子だよね」「最近来ないと思ったらまた来たんだねー」とかなんとか。結構近くまで来てるし、絶対わざと聞こえるように言ってるだろ。
悪口ってそんな馬鹿にしながら目の前で言っちゃ駄目だよ。いや裏でも駄目だけどな!

でもまさか、自分達に話し掛けるとは思っていなかったのか、随分と慌てた様子で。


「ねえ、カゼマル君って今日どうしたの?」
「か、風丸君なら…えっと」


女の子二人は顔を見合わせて、頭にはてなマークを浮かべるばかり。もしかして何も聞いて無いのかな。


「あっ…し、知らないなら別に良いんです!目立つ髪色見なくなって気になっただけなので!」


必死に弁解。べ、別にカゼマル君のことなんか好きなんかじゃ無いんだからね!


「…あっ、いや、知らないとかじゃなくって…」
「風丸君…二日前からサッカー部に転部しちゃったの」


女の子達の言葉に目を見開く。転部…?な、何で…。


「て、転部…ですか」
「は、はい」


そんな、もう走るカゼマル君を本当に見れなくなるなんて!ああ、神様!私が何をしたって言うの!私はただ、カゼマル君を想い続けてきただけなのに…っ!


「あ、ありがとうございました…」


ショックの余り、ノロノロとした動きでお礼を述べ、そこを立ち去る。今日は見て行くとか言ったけど、もう帰ろう…。

それにしてもあの子達、私の噂話する時と本人相手にする時で態度が全然違ったな。もう少し馬鹿にされると思ったのに。



(130405)


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