01



『あ、っ…。』
「大丈夫ですか?」
『…ご、ごめんなさい。』


少年の謝罪も聞かず、使用人らしき人は割れた花瓶を片付ける。
少年は、ただそこに立ち尽くし一粒の涙を零した。


"本当は"




いつの間にか、俺は独りだった。

姉弟なんておらず、両親もその分俺のことを可愛がった。
使用人たちも俺に尽くした。
両親の世話の中で俺と関わりを持つ使用人も多かったけど。
とにかく、愛された。


跡継ぎとして



俺達死神は"死ぬのが当たり前"という考えを持っているので、どんなに人が死のうとも俺も両親も気にはしなかった。
その考えは動物に限らず、物や植物にでもそうだった。
『形あるものいつかは消える』と、それが父の口癖だった

けれどいつからだろう。

俺が物をよく壊す――いや、壊してしまうようになった。
急に破壊されていく周囲の物にさすがの両親でも反応せざるを得なかった。

それからだ、俺が独りとなったのは。


「…暇、だな。何かないかなー」


部屋からの外出も見事に禁止され、何も壊せない何も出来ない俺は自らの部屋を捜索した。
何か面白いものはないものかと。


「…あ。」
あった。

見つけたのは1m半はあるであろう棒二本、がガラクタの山に埋もれていた。
興味の湧いた俺はそれを引きずり出した。
苦労して引きずり出したそれの先には鋭い刃が付いていた。

正真正銘の槍である。


「…おっもしろそー!!」


幼い頃から刃物などを持たせて貰えなかった俺はそれを手放す気などなくし、使い方を必死に身につけた。
重さにもすぐに慣れていき扱いも上達は早かった。
いつからか何でもいい、何かを壊したくなり手始めとして部屋の扉を破壊させた。
次に大広間の扉を破壊した。
物凄い破壊音に駆けつけた使用人たちがピタリと動きを止め、数秒で血飛沫をあげた。
その悲鳴に後ろを向く。
沢山の使用人が死んでいた。


「あれ?なんで死んでんの。」


弱っちいなぁ、と呟く前に自らの所持する槍から、血が垂れてきた。

あれ?まさか俺が殺っちゃった?

無意識に殺す俺は自分に疑問を感じたが、また無意識に自らの親に手をかけた。
倒れていく親に何も感じず、ただ首を傾げて言った。
つまんないなぁ、と。
そう言うと現れたのはどこかの楽団の指揮者のような演奏者のような男だった。
その男は俺に向かって言った。

君が石凪輝關か、と。


「なかなか滑稽、いや面白そうだ。」


それと同時に男の元にかける。
感じた、このまま抵抗しなかったら殺される。
だったら俺は武器を取って、殺られる前に殺ってやる。
が、俺の動きは止まる。

そこに男は近づいてくる。


「一緒に行かないか?」


俺はそうやって差し出された手を取った。


「君は悪くないよ」




"そう言われたくて、そう言って欲しくて"




それが俺、零崎輝識の生まれた日。
曲識について行った俺は絶対間違ってなかった。







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