体育の時間
結局なまえは一睡も出来ないまま、朝を迎え、学校に向かう。
「おはようさん。珍しく今日朝練休んでたやん。」
『柿本君、おはよう。ちょっと寝坊しちゃっただけ。』
「へぇ、なまえが寝坊とか珍しい事もあるんだね。」
『びっくりした!..おはよう、麻美。』
「おはよう。で、何かあったの?顔色あんまりよくないけど。」
『ただちょっと寝れなくて...。』
「そう?..ならいいんだけど。」
すると担任の折井先生が教室に入ってきたので、それぞれ席に座る。

さっそく先生はプリントを列ごとに配り、なまえをそれを藤堂から受け取る。
「おはよう、なまえ。」
『おはよう。』
なまえは挨拶をし自分の紙をとると後ろの子にも紙を渡す。

紙には、林間学校の知らせ≠ニ書いてある。
『ね、高校生活初めてのお泊りっ。すっごい楽しみだな〜!』
「そうだね。ってもあんたは別の方がお楽しみなんでしょ?ああ、でも土方先生は引率に来るの?」
『ちょ、麻美!そんなんじゃないもんっ。』
「だからあんたいつも口と顏があってないって。」
騒ぎ出すクラスに折井先生は怒鳴ると静かになり、先生がプリントを読み上げていく。

「えー、この林間学校は2泊3日だ。場所はここに記されている通り。持ち物もだ。毎年林間学校でハメを外す奴が現れるがそいつらには帰ってきたらそれなりの処分を与えるのが決まりだ。今日これをよく読んだ上で質問のある奴は明日の朝言え。それとグループ分けだが、教師側としてはモメるのは嫌だ。という事で、今の席で分けていくぞ。」
そして折井は立ち上がり、グループを近くの席ごとに4人ごとに分けていく。

「....だ。藤堂はみょうじ、桜木...あともう一人は柿本。次はー...」

『やったね!麻美、おんなじグループだよっ。』
「はぁ、先が思いやられる。」
「全くだぜ。」
「なまえ。俺も一緒って事忘れんといてや。」
『そっか、柿本君もだよね!3日間よろしくお願いします。』
「うん。よろしゅうな〜。」

次の休み時間には麻美となまえの周りには女子が集まる。
「良いなぁー!藤堂君と柿本君ってうちのクラスのツートップイケメンじゃん!」

柿本は身長も180センチあり、中学時代ではバレーボールのアタッカーとして有名である。
髪の毛は黒髪でゆるいパーマがかかっていて、大きい綺麗な二重の目が見えそうで見えない。
耳にピアスもいくつか開けていて、制服もいつも自分なりにアレンジしていてかなりのお洒落さんでもある。
バレーをするときには前髪をピンでとめるというあざとさ、そしてツボなゆる〜い関西弁で数々の女の子を虜にしてきた。


「ほんと〜。あたしは絶対、藤堂君派だけど!」
「いやいや柿本くんのがいいー。てか、林間学校楽しみだよね!」
「うん!先輩曰く毎年カップル続出らしいよ!」
「きゃー!」

麻美となまえは静かにそこから抜け出す。
「すごい勢いだわ...おばさんにはついてけない。」
『何言ってんの、麻美!あたし達はまだまだ若いじゃない!』
「もしかしてあんたも林間学校で...」
『それはない!あたしよりあーさーみ!気づいてはないと思うけど、色んな男の子たちが麻美の事見てるんだから。』
「はぁ?..っていうかなまえ。やっぱり何か「2人共早く着替えなきゃ、体育間に合わないよ?」...体育?次は英語じゃあ..。」
「黒板に書いてあるじゃん。授業入れ替わったんだよ。」
「『ええ?!』」
2人は大急ぎで体操着に着替え、運動場に向かう。

幸い先生方はまだ来ておらず、生徒たちはだらけている。
『今日はなんだか人数が多いね。どれだけのクラスが来てるんだろ。』
「ざっと見て5クラスぐらい?普段は3クラスだけなのに。」
そう雑談していると、体育教官室から体育担当の先生方が5人ほどやってきて、クラスごとに並べ!と声をあげる。
体育の先生は怖いと有名だからか、皆はすぐに行動し、クラスごとに並ぶ。
それを確認すると先生は声を張り上げ、今日の授業内容を言う。
体力測定≠ニいうワードを聞くと、皆は嫌がる。
勿論、なまえもその一人だ。

『やだなぁ..。体力測定。っていうか走るのが嫌!』
「体育なんてどれも走るやつばっかじゃない。」

先生方はそれぞれの種目に散り、クラスごと順番にルーレット風に種目を一つ一つ行う。

「ほら、原田先生いるじゃん。」
『.....あ、本当だ。』
「それよりもう一人見たことない先生いるけど。すっごいマッチョの緑ジャージ。」
『....ねー。』
なまえの目は原田しか最早追っていなかった。
「ってあんた聞いてんの?.....ははーん。土方先生の次は原田先生ってか。あんたは全く。」
『違うよ!それにあんなことされたら誰だってっ...。』
「何、あんなことって。」
なまえはしまった、と口を両手で塞ぐが、馬鹿力の麻美に解かれる。
「詳しく教えなさいな。私らの順番までまだまだ時間はあるから。」
『..うう。』

なまえは昨日あった事を麻美にゆっくりと話す。
話の途切れ途切れで麻美の顔が変わる。
最後まで話すと小さく「まじか...。」と発される。

『まじです。...あたしだって信じられないし、その、まだキスしたっていう生々しい感触残ってて原田先生の事見れないよ..。』
なまえは顔を真っ赤にし、その顔を自分の両手で覆う。
「あんた、まじで恋愛経験全くないんだね...。そんななまえに忠告。聞いた話じゃ原田先生ってかなりタラシらしいから気を付けな。というかもう関わらない方がなまえの為だよ。ましてや先生と生徒、それにこれ以上深入りしたらまずいよ。なまえの性格上。」
『...そうだよね。多分先生も勢いでキスしたんだろうけど...あたしのファーストキスだもん。そんなふうに思いたくないって思うのはダメ??』
麻美は涙目ななまえにその後何も返せずにいた。

結局、原田が担当している腹筋コーナーでは一言も交わさないどころか、顔も合わさなかった。

fin


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