私はメイド姿で会場前で正座させられている。
ああ、コンサートは始まったみたいだ。
音漏れが凄い。
横をちらっと見ると、紫はうまい棒を食べながら私のツアーバッグの中を漁り、何か探しているみたいだが、お菓子はないぞ。
緑に関しては「これは!今日のラッキーアイテムなのだよ!」と言いながら双眼鏡を手にして喜んでいる。
黄色に関しては、なんだかまた女の子たちに囲まれていて、青と水色は二人して私のメイド姿の写真を撮っては楽しんでいる。
なんだかイチャついているようにしか見えないのだが、とりあえず私はイチャコラしている青と水色を撮りたいなぁ、とか考えていたら「聞いているのか?」といういつもに増して凄みのある低音ボイスで意識を戻す。
赤司様は私の推しメンのポスターを踏みつけた。
『はい、聞いています。というか何故、あなたたちはここに?』
「今日は3時で練習は終わりで、帰り道にここを通ったのだよ。」
『さいですか。ねぇ、赤司くん、いや赤司様、コンサートに行っちゃダメ?』
「駄目に決まっているであろう。」
『何で!あのね!私は君たちと毎日一緒に入れてげふんげふんだけど、韓国にいる彼等とは違うの!ましてや同じ空間にいるのだなんて、1年間に数回なんだからね!分かる?!この遠距離恋愛の辛さ!!!』
そう叫ぶと、周りにいた音漏れを聞きに来ていたファン達が私に拍手を送ったが、赤司くんの睨みでファン達は散った。
「赤司っち、行かせてあげてもいいんじゃないッスか...?」
さすがアイドル黄瀬!ファンの心理を理解している!ナイス!
黄瀬に向け親指を立てたが、赤司様にその指を思いっきり、間違った方向に折った。
『痛い痛い痛い!!!ギブです!行きません!行きません!』
そう言うと、赤司様は私の指から手を離した。
っていうか赤司様に手を触られ、自分の親指を見てニヤニヤしていたら「死にたいの?」という言葉が返ってきた。
私は少し反省した。
『そうだよね、もう帰宅部じゃないんだし、責任は持たないとだめだよね。うん、私が悪かったです。ごめんね?もう部活はサボらないよ。』
そう言い、私は立っている赤司くんを見上げた。
「はぁ、もういいよ。....ちなみになまえはさ、俺と東方神●、どっちが好き?」
『決まってるよ、赤司様です。』
さすがに私も彼等を同じ次元の人間だと思っていて、芸能人と一般人の区別を置いて、ある程度の線は、自分で決めている。
「その答えが返ってきたならいいよ。今日はコンサートを楽しんできなよ。」
.....
まさか赤司くんからそのような言葉が出てくるとは思わなかった。
しかし彼の気が変わらないうちに、さっさとここを去ろう、そう思った私はむっくんからツアーバッグと緑間っちから双眼鏡を取り上げ、『ありがと!』だけ言い、入り口に走った。
明日から、真面目にマネージャー業をしよう、そう誓った。
fin
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bkm