17. 欲

俺は寝れなかった。

曲を作れない、詩も思い浮かばない。

そして一晩寝たら、また、式が近づいてしまうから。

今日も式が来ないことを祈り、朝を迎える。




俺はいつから、こんなに弱くなってしまったのだろうか。



時には彼女が憎くなった。

俺の気持ちを全く気が付かない、という事を。

それは今も思う。

なんで、

なんで、

よりによって俺に伴奏を頼むんだろう。

君が好きな人と、一生を誓う瞬間を、俺のピアノで送る、なんて。




どうか、彼の手を、とらないでほしい。



最後の最後で、欲が出てきてしまった。


fin.


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