嘘つきな私と必死な凛月


「私は凛月のお母さんじゃない!」

これと同じ台詞をいつか真緒の口から聞いたとこがあった気がする。炭酸ジュースをくれ、眠いから枕の代わりになってくれ、着替えが面倒なのでやってくれ。大好きな凛月が喜ぶのならと、私は快く引き受けてきた。だがしかし、その気持ちが一転する出来事が起きたのだ。

「何?急にどうしたの?」
「私は…、凛月と一緒にいるのは好きだけど、でも、誰でもいいならもうやらない!」
「言ってる意味が分からないんだけど。何が言いたいの?」
「だ、だから…」

見た。見たのだ。私が日々やっている事と同じことを他の女の子にやってもらっているのを。あの子を知っている。普通科では有名な子だ。プロデュース科に移ってからアイドル科の人たちと一緒に授業している、唯一の女の子。普通科女子からのやっかみは多く、私もよくその名前を耳にしていた。凛月からも聞いたことがある。「あんず」って。

「他にやってくれる子がいるんでしょ。仲良しみたいだし、校舎も一緒だからちょうどいいんじゃない?…膝枕も私より良いんだろうし、ご飯もあーんしてもらってたし、わざわざ私もお世話することないじゃん!」
怒りのあまり次々と嫌な言葉を吐いてしまったが、凛月はキョトンとしてから、少し考えるようにして首を傾けた。
「誰のこと言ってるの…?膝枕にご飯て……あ〜…もしかしてあんずのこと?」
「し、知らないけど、凛月に心当たりがあるならそうなんじゃない?もう幼馴染みもいらないね!」
「え〜、あんずは学校だと色々やってくれるけどさ、休みの日はいないし…。家が隣の幼馴染みのほうが楽でよっぽどいいよ〜♪」

カチン。いや、ブチン?私の中で何かがキレた。そんな言葉が欲しかったんじゃない。単純に、私がいいんだって言って欲しかった。もう我慢できない。凛月なんてもう知らない!

「…………悪いけど、もう凛月のお世話はできない」
「まだ言ってるの?ねぇ、そろそろま〜くん来るから3人でゲームしようよ。こないださ…」
「私、彼氏できたの」
「………………………は?」
「だからもう凛月のお世話は出来ない。凛月もあんずっていう彼女みたいな人がいるなら、沢山お世話してもらってくださいな!じゃあバイバイ!」

鞄を持って凛月の部屋のドアを勢いよく開けると、同時に入ろうとしてきた真緒が驚いて「うぉっ!」と尻餅をついた。そんな真緒を横目にずんずんと玄関に向かい靴を履いた。

「あれ、帰るのか?お前が好きなプリン買ってきたぞ。…って、行っちゃったか。おーい凛月、あいつどうしたんだ?………てお前もどうしたんだよ!?何だよその顔!」

両思いだと思って甘えてる(結局お世話されてる)つもりの凛月だったが、彼女に恋人がいると聞いて普通科に乗り込む。しかし、自分は都合のよい家政婦立場で凛月にはあんずがいるくせに!と怒ってる彼女は、なんとか誤魔化そうと友達にお願いして嘘の彼氏になってもらう。
別れさせようと必死になる少年らしい凛月くんを書きたい。



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