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夏祭り 1

「涼音!これあげるから誰かと行って来なさいよ!」
「は?」

夏真っ盛り、クーラーがガンガンきいてる部屋でアイスを食いながら寝転んでいたところ、母ちゃんに言われた。
その手には長方形の紙が数枚。
返事も聞かずに母ちゃんはそれを押し付けて来た。

「え?なにこれ?え?」
「それ、今週末に近所であるお祭りのチケット!」
「は?」

お祭りチケット?
祭行くのにチケットなんか必要なの?
と、良く見たら「出店 無料券」とあった。
なんだ、そーいうチケットか。

「…え、てかなんでこんなものあるの?」
「職場で貰ったんだけど、お母さんその日仕事入っちゃったから。代わりに涼音に楽しんで来て貰いたいの!ほら、彼氏と一緒に行って来たら?」
「いや、彼氏いないし別にいいや。お祭りは楽しそうだけど」

祭に誘える友達もいないしなぁ…。
そこ、哀れんだ顔しない。

「あら、いっつも朝迎えに来る金髪の子は?彼氏じゃないの?」
「金ぱっ…」

つまり平古場くんか。
えっ、というか、彼氏?
彼氏だと?
…彼氏だと?

「や、まじで冗談ヨシテ母ちゃん」
「え?違うの?」
「違う。断じて違う」
「なんだ〜…」

なんでがっかりするの。
なんでつまらなそうな顔するの。

「でもあんた確か男子テニス部のマネージャーしてるのよね?だったら誘う子1人ぐらいはいるんじゃない?」
「や、別に誘うのは男子じゃなくてもいいんじゃない?」
「でも一緒に行く女の子とかいないでしょ

ぐっさ。
母ちゃんの言葉が無慈悲に心にぶっ刺さる。
く、くそう、なぜ母親に友達がいないと断言されなきゃいけないんだ。
言い返せない自分が憎いけどねっ!

「ま、とにかくそれはあんたにあげるから。好きに使ってよ?」

口をもごもごさせてたら母ちゃんが話を無理やり終わらせて部屋を出てった。

「……」

どうしてくれるんだ、この虚無感。
そして手に残されたチケット。
彼氏も居ないし、母親にまで友達居ないと断言されて。
どうしろというのだ。
グシャ、と丸めて捨ててやろうと思ったけど…。

「…ま…明日部活あるし、誰かに聞いてみようか…」

それだけ呟いて、鞄にチケットをしまった。






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