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「みやび そろそろ起きないと風邪を引いてしまうぞ」


懐かしい匂いと声がする ずっと前から近くにいた


「ん ああ じいちゃん…おはよ」

重い瞼を開けるとそこには綺麗な三日月があった ああそうか俺 縁側でじいちゃんと桜見てて あれ いつの間にか寝てたのか

「おはよう よく眠れたか」

「ああ ごめんじいちゃん 膝重かっただろ」
「はは 昔に比べれば幾分かな」

じいちゃんの膝の上から頭を退かせ 隣に座ってみたがまだ眠たい くそ 夜中まで起きておくんじゃなかった

「何年前の俺と比べてんだよ」

呆れたように問うとじいちゃんは 何年前と言われてもなぁ…たった十数年 とつぶやきながら昔を思い出してるようだ


「雅人くんは呑気にお昼寝ってどうなのー」
「そーそー 俺らは遠征行ってたのに」

声のする方へ目をやると、縁側に寝転がり肘をつきこっちを睨みつけているひねくれ者の2人がいた

「おかえり 清光 安定
で なんでお前らそんなに泥だらけなんだ」

そう綺麗なことが一番であるあの清光ですら服や頬いろんなとこなろに泥がついている

「ほんっと最悪 短刀達が遠征の途中で泥遊び始めちゃったの! 俺汚れたくなかったからよけてたのにあいつら、ほんと、ああもうっ イライラするっ」
「僕は正直どうでもいいけど この後すぐ湯船つかるし」


一気に語り出したかと思えば顔を縁側につけ 手足をジタバタさせる清光と 正反対に呆れたように言う安定 ていうかその泥まみれな格好で縁側いたら怒られるぞ



「あーっ ダメですよ!
そんな格好で寝転がって!」

ほら ぷんすか怒りながら近寄ってきたぞ 堀川が

「げ 堀川国広 お前普段は夕餉支度してる時間なのに」
「騒がしいから来てみたら ほんとにっ
2人とも早くそこから退けて泥をはらってくださいっ
支度は今燭台切さんがしてくれてますっ」




「ほらお前ら言うこと聞かないと晩飯ぬ」


べチャッ



「がっはははは 見ろ今剣っ
雅人に当たったぞ」
「わーたいへんです
あるじさまのおかおがっ」


「雅人く、ん…」
「あ、あるじ」

そっと頬を触ってみるとべったりと泥がついていた 岩融の奴泥だんごを投げてきたようだ


「だめだめだめーー!!
雅人さん!!ダメです!!
その着物いくらすると思ってるんですかっ
まだ頬しか泥が付いてないんですっ 顔さえ洗えばまだっ」
「離せ堀川っ
俺はあの馬鹿が許せない!!」

俺の腰にしがみつき岩融の元へ行かせまいとする堀川 この着物の値段なんて知ったことじゃない 俺は今すごくいらいらしてるんだ

「おお みやび あれは確か13年前だ
いやはや つい先日のことのようだ あの頃はよくお前に膝を貸して」
「今その話するか!?このマイペースじじい!!その話とっくに終わってるし!」

「いけいけ雅人くん
岩融なんてやっつけちゃえー」
「やっちゃえ主ー」

「2人も煽らないでくださいっ
あ、ちょっと雅人さん!?」

堀川が清光と安定に気を取られている隙に腕から抜け出し 岩融と今剣の元へ走る

「ふざっけんなっ!!」

二人の近くにあった泥を手に取り投げる

「よっと あるじさまするどい〜!」
「おー 今剣 よく避けたっ」

「ちょこまか動いてんじゃね、」

べチャッ

「はっはっはっ また当たったぞ!」
「ずるいです あるじさまぼくのどろだまにもあたってくださいー」

「好き好んで当たってんじゃねー、んだよ!」

べチャッ

「ぶわっ ははは!当たってしまったぞ!」






「僕もうどうなっても知らないですから」
「みやびもまだまだ子どものようだな しかし昔よりは活発的でじじいは嬉しい」

「なにこれ蚊帳の外すぎるっていうか」
「主俺らより あっちの薙刀と短刀に夢中なんだけど 腹立つ」


縁側に座り頭を抱える堀川と楽しそうに微笑んでいるじいちゃんに 相変わらず不機嫌な清光と安定に、泥投げに夢中な俺は気づくこともなかった




(それで? 雅人くんはなんで泥だらけなのかな)
(燭台 腹減った)





20150302*




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