勇義は何故か寝ていたモコモコした部屋着のまま抱えられた。そのままエレベーターへ。

「!」

「大丈夫大丈夫」

不安に思った勇義はグィグィとスーツを引っ張ると、加賀屋はそれをいなした。

長くエレベーターにいたと思う。
一番下の駐車場まで降りると、控えていたのか数人、黒スーツを着たガタイがいい人間が。

「加賀屋さん。本家には組長と若も到着済みです。ささ、中へ」

「あぁ」

高そうな車の後頭部座席へと座らせられると、加賀屋は勇義をじっと観察していた。
勇義は居た堪れずに、空を見る。
1時間くらいすると、なんと日本家屋があった。

でかい門を車で潜ると、綺麗に整列した人達がいる。

ビクっとした勇義は、加賀屋に飛びついた。それを見ながらククッと楽しそうに笑う加賀屋。

「こんなもんじゃないからな」

何が?
と聞く前にまた抱えられ、外に出ると

「「「「おかえりなさいませ」」」」

驚いて加賀屋の胸の中へかくれる。
加賀屋はサクサク歩いてお屋敷の中へ入った。


数分歩いて加賀屋が襖を開けると、そこには組長と思われる人と若と思われる人を筆頭に30人程わらわらと人が座っていた。

「、、!?っ!!」

降ろして降ろしてっ!とビクつきながら揺さぶると、加賀屋は素直におろす。
が、勇義は直ぐに加賀屋の背後に回って背中に顔を押し付けていた。

「ははは、驚いた?」

「これ、それが勇義君かい?司。」

「そ。面白いだろ?親父」 


そう言い合うのが聞こえる。
今話しているのが、加賀屋組組長なのだろう。

「勇義、勇義みんなに挨拶して」

無理無理と勇義は張り付くが、笑顔の加賀屋は強引に前へ押しやる。

「みんな、聞いてくれ。コイツが俺の友人。大切な、大切な、な?皆も勇義には最大限の歓迎をして欲しい。」

ペコリ

大きくお辞儀をして、加賀屋の腕にしがみつく。ざわざわしたのが静まり返った。

「勇義は今は喋れないんだ。んで勇義、一番上に座っているのが組長、加賀屋御園その横に若頭、篠崎剣さんだ。」

「司が本家にまで連れてくるなんて、どんな子だろうと思ったが意外や意外!御園組長!こりゃすげー事ですぜ?」

篠崎はガッハッハと笑って、勇義を覗き込む。

「司ってやつは少し潔癖でな、人が触るのさえ嫌がるんだ。まぁ女は別だが。これは、革命だぜ」

ペコリ!!

勇義がまた意味もなくお辞儀をするのを篠崎は笑った。

「司、本当に勇義を囲う気なのか?この甘い匂い、例のあれだろう?サツにも追われそうだな」

「勇義は勇義だ。囲うとかじゃねーけど。」

「ほー違うのか」

「知らね、でも軟禁予定ー。じゃ、お披露目おわり、じゃ」

ニヤリと笑う加賀屋。組長、御園はこれからどうなるのか悟ったように笑った。


勇義のお披露目だけに呼ばれた会は、それだけで終わった。
前代未聞の会議に招かれた者は驚きを惜しまない。



帰りの車の中

「勇義、一応言っとくと、そのドラッグの効力を粗方しずめる薬はあるんだ。入手が難しいだけで。だから心配するなよ?」


勇義は驚いた。この匂いに翻弄されてきた人生だ。そう、抱っこされながら言われた言葉に衝撃を受けた。

「俺は勇義のなんだったら、勇義は俺のって事だろ?なんだってしてやるさ」



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