孤児院を新しく移り、緑川を思いながら1人で過ごす勇義。

しかし、新しい孤児院は無法地帯であった。喋れない。それだけで、いじめの標的になる勇義。

一切、反抗しない勇義は気持ち悪がられ教員にも避けられてしまう。

今日はあめが強いの

と、能天気に空を見ている勇義。

今日も一人でお天気観察。
孤児院のポストの前。ぽつん。
すると、
黒塗りの車が2台やってきた。


園長が焦っているのがわかる。ペコペコと頭を下げている。
勇義は隅に置いやられてしまった。

そのままぼーっとしていたら、
1人の男に声をかけられた。

立っている勇義の横に座って、棒切れで砂に字?を書き出した。

「ぼくー聞いてくれるか?」

何やら話しかけて来た男はとてもとても暇らしい。
子供の勇義にさえ話しかけるんだから。
男は徐に、一枚の名刺を渡して来た。
そこには
若頭補佐、加賀屋司と書いてある。
それを素直に受け取ると勇義もしゃがみ込んだ。

「この園にねー。多額の横領がみつかって闇金うちんちの金まで手を出す始末、、、だからって俺までかりださなくてよくね?」

勇義はこたえない。

「変なガキ。そんなに雨が好きなの」


2人で雨を見た。


「じゃね」

そう言って立ち上がると、こちらに手を振り去っていった。



そして、2週間後。


「なにしてんだよ」

タバコを片手に男は手下に言う。
舎弟は驚いて返事をした。

「は、はい。そ、それがこのガキ、殴っても蹴ってもここを動こうとしなくて…どうにも声が無いっぽいんですけどね。地面に汚ったねえ字で誰だかの名前を綴ってて気持ち悪ぃんすよ」

「あぁこの間のガキ」

「え、あ、すみませんっ!加賀屋さんの知り合いでしたか!?」

勇義はじっと加賀屋を見た。
いや、と答えた加賀屋だが勇義の目線に合わせて言った。


「ここの園は大層なバックにも関わらず、半年も踏み倒したんだ。悪いやつだろ?」

ぱちくり。
こてん。
昨日の事だろうか。

「日比組って聞いたことないか。あぁまだガキだし分からないもん?俺達はそこから来ててさ。悪いやつらは許せないんだ。お仕置きをするのが仕事。お前もここで生活したんだ、同罪つーことか。」

勇義はそうかとでもいうように頷いた。
加賀屋は勇義の瞳をじっとみると、ククッと笑い出した。


「気分が乗った。お前はどうしたい?─園と一緒に売られるか、死んどくか。あぁ、お前くらないなら逃がしてやれなねぇ訳じゃねー。その歳で一人で生きてくってのも考えものだけどなぁ。オススメは2だ」

こてん。勇義は首をまげる。

「俺の言ってる事が分からないんじゃ話は終わりかもな。自分で選べる分岐点のチャンスはそう巡ってこねーから」

「加賀屋さん!若から連絡です!」

「まじだる」

勇義はぐいぐいとメモ用紙を加賀屋に押し付けた。


「?くれんの?あー悪いな時間だ。明日にでも答えを聞かせろ」

「!」
男達は足早に
車に乗り去った。


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