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「…あ、新しいの…注文しとくっ」
勝手に口からそんな言葉がでたけど「チッ」と空を切るその音でまた何も言えなくなった。
ぐるぐる回る思考。
もうダメだ、
「──お、かえり…なさい」
最後に言う。
突拍子のないその言葉に自分でも驚く。
「…─ぇ?」
こてん。首を傾げると同時に流君は何もなかったかのようにスッと通り過ぎたのだ。
…こ、これで、いいのっ?
こんなので良かったのっ?
疑問符しか出てこない頭で、涙を袖で拭いながら流君の後を追いかけた。
急いでリビングへぱたぱた戻ると、いつものようにソファにどっかりと座っている姿。
ちょっと、気が引けたけど恐る恐る横にちょこんと座る。
直ぐ横で流君が片手に携帯を弄っている。
さっきの雰囲気はなくなって、いつもの流君だ。
ほっとした。
…けど、
「ぱそ…こん」
さっきの事がどうしても気になった。
「の、事。もう怒って、ないの…?」
ちらりと目線を上げて掠れる声で言うと、目だけこっちに向けて「何の話だ」とでも言いたそうに眉根を寄せた。
オレは頭に「?」を追加させて、こてんと首を傾げる。
「ゎっ」
すると不意に手首を取られた。
「ぃたい・・・よ」
赤くなった指先をかじる流君。
何だろう、流君は絶対そんな気はないと思うんだけど、あやされているように感じるのは気のせいなんだろう。痛いし
「流君、お帰りなさい」
もう一回きちんとその言葉を言うと、更に首筋を噛んできたのだった。
end.
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