アナタが世界でボクが色。 | ナノ


始まりの邂逅

「土の、においがする…」




どうしようか………





「だーれーかぁ………いませんか」


当たり前にその声は、自分ひとりである。

只今、非常に困っていたりします。

ほんの数十分前?まで寮の校舎内に居た筈なのに辺りには木、木、木。右を見ても左を見ても同じ光景が広がっていてどっちから来たか、どっちに進めば良いのかも全く見当がつかない状態。同じような木を見続けて目が回ってきた。しかも時間の感覚も麻痺してきたりして…。



…しっかーし!


「きっとコッチな気がする」


少しの不安を拭いすてて、ビシッと方向を指差すと森の中を進んでいく事にする。
しかしながら、これは二回目の方向転換である。

むー…それにしても広いなぁ。
結構歩いたと思うんだけど…

そんな事を思いながら歩いてると、突然目の前に大きな壁が見えてきた。分厚そうで高くて檻のような壁。


「…おっき」


でも何か見覚えのあるような…気がする。
その見た事のある壁をじーっと見つめて、間。


「あ」


入り口の門だ。手で触れてもそれは確かにあの時の壁だ。
どうしよ…ここまで来てるとは思わなかった…。こういうのってやっぱり方向音痴って言うのかなっ!?あーう!

…自覚せざる終えない状況。
こんな事ならパンフレットの地図くらい持って来れば良かったぁ。
何とかなると信じて疑わなかった数時間前の自分を叱咤してあげたい…。
まぁ今更こんなこと考えててもしょうがないのだけど。
まさかの方向音痴発覚にため息しかでない。


「…とにかく戻らないと───っ!?」


そう門を背に来た道を戻ろうとした時、足に力が入らなくてカクッと足から崩れ落ちた。


「いっ…たぃ」


その場にぺたんと座る。
思ってたより足に限界が来ていたみたいだ。ちょっと休まないとダメらしい…。
歩き出して開始5分で足がつって、もつれてたから、多分明日は筋肉痛だとは思ってたけど…。はぁ。
今更ながら体力の無さにうなだれる。
脱力しながらも、のそのそと門に背を預けて少し休む事にした。


「ぅー…。これだから歩かせてくれないんだよね…」


いつも歩く時は流君に抱えられてるからなぁ。運動という運動を全くしてない事は自覚済みです。


「体力、つけなきゃな…」


流君がいないうちに
そう言えば流君みたいなのを無駄な筋肉がないって言うのかな。…格好いい。
いいなぁ。オレも、ムキムキになって軽々と流君を持ち上げられたら流君楽になるかなぁ。あ、何だっけ。こういうの親孝行って言うんだっけ?いや、親じゃないから恋人孝行か。うんうん。いいかも。


そんな計画を考えて意気込んでいると突如、地面に大きな影ができた。

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