「…暇だな」


目に痛いくらい煌々と光る電球が部屋を隅々まで照らし出す。
ベッドと机、簡素な部屋にはPCも無ければ何もない。それと1つだけ持ち込みを許された携帯のみ。それもフィルターをかけられ飛べる範囲は狭い。

──暇すぎるだろ。というか、気が狂う。

岳は、勉強机に設置された回転式の椅子をキィキィと慣らしながら一つ溜め息を吐き出す。

こんなにネット環境から離れた事が無かった岳は激しく後悔に陥っていた。

昨日来たばかりのこの施設に面白みを期待していたが、それは予想を下回っている。

世間一般でのこの施設は、問題の多い子供を国を上げて完全に社会復帰させる事で有名であった。所謂
問題児の滑り止めか。

場所も内情も一切不明。でもそこを卒業出来れば必ず社会復帰が出来る。
興味のない事柄は、全くのノーマークだったが常識的にそんな事は知っていた。

何でも、矯正率100%。
ふと、そんな事を思い出して苦笑を漏らす。

──100%?馬鹿をいうな成人でのリミットでどう矯正出来るっていうんだ。大方、矯正出来なかった奴らは施設の信頼の為とかで精神病院にでも突っ込まれるんだろう。

一般的な施設とは違い
絶対隔離施設として内情は一切晒されていない。そのせいか、金持ちの令嬢子息も自分達が持て余した我が子を入れる者も多い。

もっと気がふれた奴らが居ると思えば、来た時点では病棟を連想させる外装や服装とは違い、普通の学校のような活気があった。

学校なんて行った記憶は岳にはないが。

到底問題児だけで構成されているとは思えない。まぁ多少の空気感や違和感はあるが、どれも常人のそれを僅かばかり増した程度だ。

取りあえず、


「人でも殴ってみるか」


何となく浮かんだ安易な考えを誰も居ない空間に呟く。もしかしたらさっきのルームメイトに聞こえたかもしれない。

──少しは俺を
楽しませてくれよ




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