寒さが本格化する季節。
病棟を大規模にしたような白く重々しい建物がそびえ立つそこは、少し早くパラパラとまばらに雪が降り始めていた。
山々に面したこの地帯に時折、かなばり声や物の壊れる音が響く。
一際目を引くその建物は、国が運営する施設。
未成年が対象のこの施設には、各地から¨問題児¨が集まる。設備の整ったこの環境で暮らして矯正し社会復帰を目標にしている。
それがここの役割であり、各地にある施設の一つである。
そんな施設の一室に30号室と彫られた鉄製のプレートがキラリと光ってさがっていた。
白を基調にした部屋には、キッチンが無い限りは通常のマンションよりも広く使いやすい造りをしている。そこに物は一切なく、空き部屋という言葉が似合いそうだ。
そして、一室4人と決められていたこの部屋の中には1人の姿しかなかった。
そわそわと時折玄関を気にする彼は、まだあどけない風貌に似合わず儚さと色気をもち雰囲気が不可思議に甘ったるい。
しきりに玄関へと視線を向ける彼は、来るであろう人物に思いを馳せていた。
実は今日、新しいルームメイトが来るのだ。
数分後、ガラガラと小さくスライドされる音がなり、鍵の無いドアが開いて1人の彼の見知った教官が現れた。
峰という施設職員の1人である。そして峰の後ろに影があと2つ。
「雨宮君。昨日話してた通り新しく入る子が来たよ」
そう言った峰の言葉で、気分が上がった。
興味津々で峰の後ろの2人を覗き込むと、違う系統の美形がつまらなそうな顔をして立っていた。
ひとりは、茶髪と茶色目の大人しそうな中性的なイケメン君。どこか気品を漂わせつまらなそうに、ぼーっとどこかを見ていた。
ひとりは、黒縁眼鏡のよく似合った売れっ子モデルのようなキリッとした美形。左手に携帯を持って、もの凄い速さでカチカチと打っていた。
つまらなそう、というかどうでも良さそうだ。
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