「では早速始めましょうか」
「うん。あれから修行したんだからね!」
「ふふっ、楽しみです」
第12話 降ってきた少年
今日はユヅキさんと剣の練習を軽くする予定だった。だから今私とユヅキさんは剣を持ち向かい合っている。あれから私だって練習したんだもん、一撃ぐらいあたえれる…と信じてる!
「ルールは簡単、5分の間に私に一撃あたえてください。そうすれば明さんの勝ち。あたえられなかった場合は私の勝ちです」
「わかった!」
風が吹く。そして次の瞬間私の携帯が鳴った。これは開始ということでもう動いても構わない。だけど先に動いたのはユヅキさんで既に前に姿はない。
「!わっ!」
剣と剣がぶつかる音が鳴る。突然目の前に現れたユヅキさんの剣を私が防いだからだ。
「強くなりましたね。前のあなたならもうくらっています」
「そ、りゃ…頑張ってるから、ねっ!」
何とか押し返し今度は私から攻撃しにいく。横に斬り縦に斬りと繰り返すが全て受け止められ。やっぱり全然だ。そんな事を思っているとユヅキさんが横に斬ろうとしてくると何故か思ってしまい思わず後ろに下がった。
「…読めましたか」
「え?」
って事はあってたの?本当に横に斬ろうとしてたの?嘘…。
「確実に強くなっています。自信を持って下さい」
うん!と返事をしようとしたら足払いされて体勢が崩れる。そこを見逃さないでユヅキさんは私の顔に向かって剣をつきつける。と同時に私の携帯が鳴った。5分経ったという事だ。
「私の勝ち、ですね」
「く、悔しい…!」
「明さんは隙を見せすぎです。あんなのじゃ直ぐにやられますよ」
「はーい…」
今日こそはと思っていたのに。確かに戦闘中に喜んでる場合ではなかったな、と反省しながら剣を鞘に戻す。ユヅキさんは「ですが」と付け加えて。
「いつか私もやられるかもしれませんね」
と笑った。「まあそう簡単にやられるつもりはないですけど」と余裕の笑顔も見せられたが。絶対次こそ勝ってみせる…!
「明さん。自分にとって大切な何かを見つけられましたか?」
「…ううん、まだ。ごめんね」
「いいえ、時間は一杯あるのです。大丈夫ですよ」
「そっか。…ね、最近シズクさんどうしてる?」
「シズク様…ですか」
私がそう聞くと何故か暗い表情をするユヅキさん。何か…あったのかな。
「最近は色々あって少し元気がないです」
「え!?だ、大丈夫なの!?」
「…心配、しているのですか?」
「当たり前だよ!」
シズクさんは私をここにこらせてくれた恩人みたいな人で。…ううん、それだけじゃない。それ以外もあるんだけど…その気持ちがわからないんだ。とにかく心配という気持ちは絶対わかる。
「…ではその事をシズク様に伝えておきます。そうしたらあの方は喜びますから」
「そうなの…?」
「はい。明さんだから、喜ぶのです」
な、何か良く分からないけどそれで元気になってくれるならいいかな。ユヅキさんは翼を出す。
「待ってユヅキさん。良ければトレインさん達と会っていかない?」
「…あいつとですか」
「ト、トレインさんだけじゃないよ。ちゃんとスヴェンさんとイヴちゃんもいるから!」
ど、どうしてトレインさんって言っただけでもそんな不機嫌になるの…!?そんなに…嫌いなのかな。絶対仲いいと思うのだけど…。
「…遠慮しておきます。いずれ嫌でも会いますので。嫌でもです」
「そんな強調しなくても…」
「明、ここにいたんだ。…あ」
「イヴちゃん!」
「ユヅキ。久しぶり…」
「…そうだな。初めて会った時から会ってないからな」
イヴちゃんが微笑むとユヅキさんも微笑む。…なんか敬語じゃないユヅキさん久しぶり…。印象変わるよね…。
「もう帰っちゃうの?」
「ああ。明さんと剣の訓練もしたからな」
「そっか。また今度だね」
「そういう事だ。…では私は帰ります。また…」
「うん!今日はありがとうユヅキさん!」
光に包まれてユヅキさんは消える。イヴちゃんはユヅキさんと喋れて嬉しかったのかな。なんだかんだ仲良くなりそうだしね。
「それよりどうしたの?」
「トレインがご飯を奢ってくれるんだって」
「え?」
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