トレインさんが奢るとは一体何事かと思ったらどういう事かわかった。どうやら私とユヅキさんが戦っている間、イヴちゃんとトレインさんも同じようなやり方でしてたみたい。5分以内に銃を抜かせたら何でも一つ言う事を聞くという条件付きの修行をして結果はイヴちゃんが勝ったという。


「…で、その結果飯を奢るハメになったのは仕方ないとしてだな。何でスヴェンと明にまで俺が奢ってやんなきゃなんねーんだ姫っち」


指をさしながら言うトレインさんにイヴちゃんははっきりと言う。


「私だけ食べてたら二人がかわいそーでしょ?」


何を当たり前な事を言っているんだという表情で。スヴェンさんはフフンと鼻を鳴らし「約束は約束だろ」と嬉しそうに言う。トレインさんは諦めたのか何も言わなくなった。


「な、なんかごめんね…?」

「…まあいいけどよ。たまには奢らねぇとな」


とは言いながらもため息をつくトレインさん。ざ、罪悪感が半端じゃない…!
すると不意にイヴちゃんがスヴェンさんに私を呼びに行った時の話をした。


「あのねスヴェン。ユヅキと会ったの」

「ユヅキと?」


私はちゃんと皆にユヅキさんと修行していることを言っている。だからその間に会ったのか、とスヴェンさんは直ぐにわかってくれた。


「元気そうだったよ」

「そうか。久しぶりに会いたかったな」

「その内会えると思う。ユヅキさんも言ってたし」


…嫌でも、って言ってたけど。流石にそれは言わないけどね。でもやっぱりスヴェンさんもユヅキさんに会いたいんだ…。ユヅキさんの事気にかけてくれる事が嬉しい。


「ユヅキねぇ…」

「トレインさんは嫌?」

「嫌っていうか…直ぐ喧嘩みたいになるからな。合わないというか…」

「そうか?結構仲いいと思うぞ」

「同感」

「げ、やめてくれよスヴェン、姫っち」


仲がいいと言われてあんまり嬉しい顔しないということはやっぱり嫌なのかな?二人の言う通りあの時凄い仲良さそうに見えたけどな…。
そこでバキッと何かが折れたみたいな音が上からしてトレインさんも気づいたのか顔を上げると。


「うわああぁあ!!」

「わぶっ!!!」

「!?」


音が鳴った木の上から人…見た目的に男の子が降ってきて見事にトレインさんを上に乗り押し倒す。何事かと目を見開く事しか出来ない。まさか木の上から人が落ちてくるなんて。


「な…何だぁ!?」

「い…いててて…」

「どっから降ってきてんだよ、このコゾー…」

「ど…どけよこのヤロー!」

「はぁ!?そりゃこっちのセリフだっ!」


左頬に絆創膏をした男の子がトレインさんに指をさしながら怒るのでトレインさんも言い返す。なんか…降ってくるなんて私と似てるなぁ…。


「大丈…」

「いたぞーっ!!」

「!」


二人に対して大丈夫かと聞こうとした瞬間男の声が聞こえて黒い車が目に入る。窓から体を出してきた男が持つものは銃。気づいたのはいいものの、体はついていけなくて。


「スヴェンよけろっ!」

「!」

「わっ!」

「え、ちょ…!?」


そうスヴェンさんに叫ぶトレインさんは撃たれる数秒前に私と男の子の体を抱えて直ぐ傍にあった柱を盾にする様に後ろに隠れる。スヴェンさんはイヴちゃんと木に隠れていた。


「ちっ!何だってんだぁ!?」


止まらない弾丸の連射にトレインさんは私達の体を離し「マナーのかけらもねぇ奴らだぜ」と静かに言い装飾銃を取り出した。それを見て男の子が息を呑むのがわかった。
トレインさんがほんの一発撃つとそれは男の左肩に当たった。すると窓から出していた体を引っ込めて男は車を動かし何処かに行ってしまったのだった。


「大丈夫か!?トレイン、明」

「へっ!あったりめーだろっ」

「トレインさんのおかげで大丈夫だよ。ありがとう、トレインさん」

「ま、明一人じゃ流石に対応出来ねぇだろ。これくらい軽い軽い」


笑いながら言ってくれるトレインさん。頭の隅で抱えられた時重たくなかったかなと思ったが、深追いしない様にしてイヴちゃんに声をかける。


「イヴちゃん、大丈夫だった?」

「うん。私は平気」

「…何者だ?今の奴ら」

「さぁな…」

「あの…大丈夫だった?」


一応念の為私が男の子に訊いても彼はずっとトレインさんを見つめている。トレインさんに気になる部分があるのだろうか。やがて口を開いた。


「あ…あんたさ。もしかして殺し屋かなんかか?」


殺し屋…?さっきトレインさんの装飾銃を見たからそんな事を言うのかな?


「た、頼みがあるんだ!ブッ殺して欲しい奴がいる!」

「は?」


殺して…欲しい?突然の、それも内容は物騒であるお願いに私達は驚くことしか出来なかった。
 
 
 
 
 


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