『私と友達になろう?』


今でも覚えてる。手を差し伸べながら告げられた言葉も、その時のあの子の顔も。忘れる訳がなかった。















 第4話  一日ダーリン















「おはよう!」

「おはよう、明」

「おはよう」


スヴェンさんとイヴちゃんに挨拶をする。先に椅子に座っていたイヴちゃんの隣へ座り、目の前のテーブルに並べられているご飯を見る。どう見ても美味しい料理に口角を上がってしまうのをなんとか抑えながら手を合わせる。いただきます、と言った後料理を口に運ぶ。うん、美味しい!
私が料理の美味しさに喜んでいる隣でイヴちゃんは自分の両手を見ていた。すると次の瞬間、イヴちゃんの右手の人差し指がフォークに、左手がナイフへと変わる。そしてそのまま両手のナイフとフォークで食べ始めた。


「美味しいね!」

「うん」


表情を変えずに返すイヴちゃんだけど、手が止まる様子はない。自らの意思とはいえフォークとナイフに変わっているのにも関わらず、それを使って食事をしているイヴちゃん。初めて見た時は驚いたけど、今は凄いという感想しか出ない。
私が皆と行動する様になって少しだけ日は経った。その間に皆の事を教えてもらった。隣にいるイヴちゃんは"変身能力"がある。…正直頭が良い方では無い為あんまり詳しくはわからなかったけど、なんでもナノマシンという超微小ロボットがイヴちゃんに組み込まれている為、今みたいに自分の体を他の物に変身したり出来るらしく。イヴちゃんはこの力を人を守る為に使っているみたい。


「明は本当に美味しく食べているな」

「だって美味しくて。…そんなに顔に出てる?」


出てると頷かれてしまった。そう指摘されると恥ずかしくて食べていた手を止めてしまう。すると悪い気は全然しないから気にしなくていいと微笑みながら言われてしまった。料理を残す気は無い為、出来るだけ顔に出さずに食べる事に専念すれば、スヴェンさんに笑われてしまった。
…スヴェンさんが眼帯をつけている右眼。あの右眼はスヴェンさんの前の相棒…今はもう、亡くなっているロイドさんっていう方の目を移植した目。その目は普通の目ではなく、数秒後の未来が見える。だけどそれを使うと体力を凄く消費して眠ってしまうらしい。だからあまり使わないように眼帯をしているのだとトレインさんに教えてもらった。


(…皆の事を知れば知るほど、凄い人達と行動する事をお願いしたんだなって思っちゃう。特に、トレインさん…)


今この場にいない彼の事を頭に思い浮かべる。…トレインさんは昔、"秘密結社[クロノス]"っていう組織の一員だったらしい。それで"時の番人[クロノナンバーズ]"っていう強いチーム?って感じの所に]Vとして入っていたらしい。今はもう抜けているが、トレインさんは今でも有名らしく、伝説の抹殺人[イレイザー]…通称、黒猫[ブラックキャット]と言われている。組織を抜けた理由は詳しく訊けなかった。簡単に踏み込むべきでは無いと思ったから。唯一わかったのはクリードっていう人を探すとか何とか…。
ユヅキさんに実力があるといわれて否定しなかったのはそういう事だったのかと理解した。トレインさんが人殺しをしていたなんて正直信じられないけど、事実なのは違いない。驚きはしたけど、今は人殺しとは違う掃除屋をしている。それだけで怖いなんて気持ちは一切なかった。
皆の素性を知って改めて思うのは…皆の役に立ちたい。ただ、それだけ。助けられるだけじゃなくて、少しでも助けれる様になりたい。
 
 
 
 
 


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