「スヴェンは食べないの?」

「一緒に食べようよ」


私とイヴちゃんが言ってもスヴェンさんは武器を弄る。どうにもスヴェンさんは新武器開発で一晩中起きてたから眠たいらしい。そのせいか声から疲れと眠たさを感じた。それならそれで休んだ方がいいと思うけど…。


「そういえばトレインは?」

「私も思ってた。出かけてるの?」


全くこの場に来る感じがしなくて訊けば、スヴェンさんは武器に触れながら苛立ちを含めた声で言う。


「…あいつはデェトだよ。昨日リンスレットからヤツにメールが届いてな…。あの馬鹿、飯奢ってもらえると知ってすっとんで行きやがったぜ」

「デート!?そのリンスレットさんってトレインさんが気になっている女性とか!?もしくは恋人!?」


『デート』という言葉に反応してしまって声を上げてしまった。いやだってトレインさんってカッコいいし、絶対モテると思うんだけど。そしてそんなトレインさんが気になる人は相当素敵な人だろう。きっと美男美女って感じなんだろうな。私も将来素敵な人と出会えたらいいのに…!
頭の中でトレインさんの隣に立っている女性を色々想像して羨ましいなんて思っていれば、スヴェンさんは溜め息をついて私の考えを止める様にこう言う。


「…一応言っておくが、リンスレットはお前が思っている奴じゃないぞ」

「え?」


私が思っている奴じゃない…?どういう事なんだろうと考えているとスヴェンさんが相手の素性を話してくれた。
…なんでも、リンスレットさんは泥棒請負人だと言う。泥棒請負人。各国の政府やマフィアの偉い人の中にも世話になってる人達が多いらしく、他国の極秘情報や入手困難な品物をリンスレットさんに盗んできてもらうという。但しそれは高額の報酬と引き換えに、らしいけど。あ、相手がそんな人とは予想外すぎる…!トレインさんとも別にそういう関係でもないみたいだし。


「…大丈夫?」

「だ、大丈夫だよ!結局は互いの気持ちが重要だから!そうだよ、そうに決まってる!」


明らかに私が凄い顔をしていたからか、イヴちゃんに無駄な心配をかけてしまった。自分に納得する様に言ってうんうんと頷く。実際会った事もないし、そういう素性だったとしても良い人なら問題ないはず。
スヴェンさんはとにかく何事も無ければいいんだけどなと眉をひそめながら呟いていた。


「ごちそうさま。洗ってくるね!」

「ありがとな」


美味しかった料理を平らげて手を合わせて食器を洗面所へと運ぶ。どうやらイヴちゃんも食べ終わったらしく、私の隣に並んで一緒に洗う。汚れている皿を洗っていればイヴちゃんが私を見て言う。


「明、服買ったんだね」

「あ、うん。あの服じゃ目立つ気がするし、動きずらそうだから。スヴェンさんからお金を貸してもらったの」


ここに来た時の服装は元の世界で着ていた制服。いくらなんでもあの服装で闘うなんて私の中ではありえない。それに私の制服はスカートだし、ズボン派な私からすれば尚更変えたい所だったのだ。
剣はベルトで挟んでいる。必然的に常に持ち歩いている事になるのだけど、この世界ではあまり気にする人がいないみたい。私が服を買いに行った時も普通に武器を持っている人がいたから、普通の事なのだろう。それこそ掃除屋の人達なんて常時しているだろうしね。


「明に似合ってる」

「あ、ありがとう…」


お世辞でも嬉しい。私の服装はセンスが無いと散々元の世界で言われてきたから。『もう少し女の子らしい服装にしたら?』とか人を傷づける言葉を平気で言われた事もあったっけ。今思うと懐かしくもなるけど、やっぱり何この苛めとは思うかな。一番酷かったのは司だったけど…。


『明。恋に夢見るのはいいけど、少しは努力したら?時々あなたの将来が心配になるわ…』

『え、そこまで?』


別に服装にセンスが無くても要は他の部分をちゃんとしていれば良いのではと反論したが、他で補える要素あるのかと詰められて何も言えなかったな。自分でも充分わかってるのにあれだけバッサリ言うのは司の長所でもあり短所でもあったというか。


「…よし、終わったね」

「うん」


なんだか懐かしい思い出を思い出していると全ての皿を洗い終わっていた。タオルで手を拭いて私はイヴちゃんに口を開く。


「私も今から外に出るね」

「何するの?」

「剣の練習…というか、少しでも慣れておこうかなって」

「…頑張って」

「うん、ありがとう!」
 
 
 
 
 


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