今日もいい天気。私は窓を開けて清々しい青空を見ながら口角を上げる。そして少しだけ隣に立つ人の迷惑にならない様にしたいから、鏡を見て髪を整える。服は…ま、まあ、いつもと変わらないけど、変にお洒落をするより良いよね。
こんな日に剣なんて物騒な物を持つのもおかしいから剣を置いていく。いざと言う時は鞄の中に入れているトレインさんとスヴェンさんから頂いた閃光弾があるからどうにか出来ると思うし。


「よし、準備出来た!」


扉を開けて自分の部屋から出る。宿から出ようとすれば後ろからイヴちゃんに呼ばれて。振り向けばトレインさんもいた。


「楽しんできて」

「うん、ありがとう」


イヴちゃんが穏やかに微笑む。私も微笑み返せばずっと話さないトレインさんと目が合った。が、何故か逸らされてしまう。首を傾げながらも改めて外に出ようとすれば腕を掴まれた。彼…トレインさんに。視線は一向に交わらないけど…焦っている様な表情をしている。


「トレインさん…?」

「明、やっぱり行く…」

『何故貴様はそうまでして嫌がる?それすらわからない奴に言われる筋合いはない』

「っ…!いや、何でもねぇ…」


言おうとしたトレインさんが何かを思い出したのか苦しそうに告げる。…やだな。トレインさんのこんな表情見たくないよ。
離れていく手を慌てて握る。恥ずかしい気持ちは当然ある。ドキドキと胸が高鳴るし顔だって熱い。だけど少しでも元気が出るよう祈るみたいに自らの額に握った手を近づける。顔を上げれば驚いているけど何処か顔を赤くしているトレインさんと目が合った。


「お土産、買ってくるね」

「…ああ。待ってるぜ」


お互いに照れくさいのを紛らわす為に笑う。良かった。トレインさんの笑っているのを見るだけで胸が暖かくなるよ。単純だなぁ…私。
今度こそトレインさんに別れを告げて名残惜しいけど手を離し外に出た。向かうは今日のお出かけする相手が待っている場所。携帯を開き時間を確認すると集合時間に近づいていた為、私は駆け足で急いだのだった。










  第30話  波乱デート










イヴは今すぐにでも出ていこうと準備をするトレインにため息をついた。先程彼女と甘酸っぱい雰囲気を出していたから多少は機嫌も良くなって今日の事を煩く言わなくなるだろうと思っていたのだ。
ところが予想を覆すトレインは彼女が出ていくと直ぐ様後を追う準備に取りかかったのだ。それだけならまだいい、あいつと出かけるなんてやはり許せないとか任せられるかなど文句を言っていた。だから尚更ため息をつきたくなる。


「大体何であいつの言葉を思い出すんだよ!くっそ〜!」


先日ユヅキに言われた言葉を思い出したから止めなかったのかと一人納得するイヴに対してトレインは自分の髪をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でる。図星を突かれているから余計に腹が立つのだろう。


「ムカつくのなら行かなければいいのに」

「明とユヅキが二人で出かけるのを黙って見てられるか!」


そう思うのはトレインが明を好きだからでしょ。喉まで来ている言葉を危うく口にしそうになったイヴだが何とか堪らえた。…代わりにもう一つため息をついたが。
トレインは「それに」と上着を着て扉のドアノブに触れながらイヴに言う。


「姫っちが言っただろ?気持ちを知りたいと思うなら見に行けって。俺はこの気持ちが何か知りたい。だから行くぜ」

「…そう」


素っ気なく返しているが表情が優しいイヴ。イヴなりに二人を心配しながらも応援しているのだろう。…見ていて焦れったいという気持ちも多少はあると思うが。
早く行かないと追いつけなくなるけど、なんて急かせばトレインは返事をして出ていく。パタンと閉まる扉を見てイヴは呟く。


「良い報告待ってるから。…二人とも、頑張って」


明はユヅキに対して。トレインは自分の気持ちに対して。二人を応援するイヴの言葉は二人の耳には当然届かなかった。
 
 
 
 
 


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