次の日。見晴らしの良い街にある真ん中に建っている仏像が特徴の縦にも横にも長い階段に私とイヴちゃんは他の人の邪魔にならない様に座っていた。後ろには街を見ながら電話をしているトレインさん。電話の相手はスヴェンさんだ。
「"星の使徒のアジトをつきとめた"ってやつを見つけたぜ」
先程ここに来る前に寄った所で買ったバーガーを食べているイヴちゃんを見て私も買ったジュースを飲みながらトレインさんの言葉を聞いていた。
「…何とかな。人を小馬鹿にしたやーなゲームだったぜ」
不意にトレインさんの声のトーンが変わった気がした。きっとあの時の事を思い出したのだろう。ま、まあ…確かにトレインさんの気持ちもわかるけどね…。
第28話 カーシェという男
思い出すのは昨日の画面に映った小さいグリンさんの言葉。
『《掃除屋同盟参加希望者の集合場所は―…ここだぁ!》』
グリンさんが指をさした先には白い猫が持っている看板があり、そこに場所が書かれていた。トピリカ共和国サポワ地区、23ー175番地と。期日は10月18日の午後3時までだと告げるグリンさん。
『《1分でも遅刻した人は参加できなくなるから注意してね!》』
『トピリカか…行った事ねぇな』
『遅れないようにしないとね』
そう、ここまではよかった。問題はこの後の発言だったのだ。グリンさんがバイバイと言った後『《言い忘れてた!》』と言って。
『《ゲームオーバーになったらゲームのデータが消えるって言ったけど、あれ勿論嘘だから!》』
『え?』
『《これからもこのゲームで楽しく遊んでね!》』
開いた口が塞がらない、とはこういう事かと思った。あれだけゲームオーバーにならない様に必死に頑張ったのに、まさか嘘とは誰が予想できるのだろう。この後トレインさんは怒ってゲームの電源を切っちゃってたし。
「イヴちゃんが一番頑張ったのに…グリンさんは少し意地悪だね」
「私は気にしてないよ。それに私だけじゃない、明も頑張ってた」
「そう言ってくれると頑張ったかいがあったよ!」
イヴちゃんにそう言われると嬉しくて頬が緩む。…た、ただ、トレインさんは?とツッコミそうになるけど。グッとおさえて私はバーガーを一口食べる。
「…わかった。明、姫っち。9日間三人だけで我慢しろよ」
「えっ…」
「どういう事…?」
何やら事情があるみたいだ。スヴェンさんは当日に私達と合流するらしい。チラリとイヴちゃんを見れば少し落ち込んでいるみたいだった。やっぱりスヴェンさんと会えないからかな。トレインさんはまだスヴェンさんと話していた。
「…おう、いるぜ。ほれ明。スヴェンから話があるんだとよ」
「スヴェンさんから?」
トレインさんから電話を渡されて受け取り、私は耳に携帯を持っていく。何の話だろう。
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