「もしもし?」

『ああ、明か。突然すまんな』

「ううん、大丈夫だよ。どうしたの?」


スヴェンさんと電話で話すのはあまりないからか、少し緊張する。悟られない様に落ち着いて話せばスヴェンさんは答える。


『ユヅキに会ったぞ』

「!ユヅキさんと!?」


まさかここでユヅキさんの名前が出てくるとは思わなかった。つい大声で言ってしまったから隣にいたイヴちゃんが驚いていた。「ごめんね」と小声で言い、トレインさんにも言おうと思って顔を上げた…のだけど。


「ト、トレインさん?」

「な、何だ?」

「ごめんね、うるさかったよね!だからその、怒らないで…?」


明らかに顔を険しくさせているトレインさんに申し訳なくなってちゃんと謝れば、トレインさんはまさか自分がそんな表情をしているとは思っていなかったのか、「ぜ、全然怒ってねぇって!」と焦る。だったら良かったけど…。でも不機嫌そうだったな。


『明?何かあったのか?』

「あっ、ごめんねスヴェンさん。大丈夫だよ。それでユヅキさんはどうして?」


スヴェンさんも詳しい事はあまりわかっていないが、とにかくスヴェンさんにもしも怪我とかがあったら私達が悲しむだろうからと来てくれたらしい。確かにスヴェンさんに何かがあったらトレインさんやイヴちゃんが悲しむだろう。勿論それは私も含まれる。


『前に明が言っていた通り、ユヅキの様子が変だった』

「そっか…」


時々皆にユヅキさんとどんな訓練をしたのかとかを言っていたから、スヴェンさんは訊いてくれたのだろう。出来ればユヅキさんの悩みを聞いて相談にのりたい。友達だから。でもそれは無理矢理聞きたいわけじゃない。ユヅキさんが私に話してくれるのなら、だ。その時はちゃんとユヅキさんの助けになりたいよ。


「スヴェンさん、色々ありがとう」

『ああ。じゃあこれで…』

「あっ、待って!」


切ろうとするスヴェンさんを止めて私は隣にいるイヴちゃんの前に携帯を持っていく。戸惑いながらも私を見るイヴちゃんに微笑みながら頷くと、イヴちゃんは私から携帯を受け取った。嬉しそうに話すイヴちゃんを見て私は良かったと思いながらトレインさんの隣に立つ。


「トレインさんの携帯なのに回してごめんね」

「気にすんなって。姫っちもスヴェンと話したいだろうしな。…んで、ユヅキがどうしたんだ?」

「え?」


おもわず言われた言葉に聞き返してしまった。トレインさんがユヅキさんの事を聞いてくるとは思っていなかったからだ。
一方ポカーンとしている私をトレインさんは「どうしたんだ?」と不思議そうに見てきて慌てて何でもないという意味を込めて首を振り、今スヴェンさんと話した事を口にした。
 
 
 
 
 


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