「…大丈夫ですか?明様」

「え…?ユヅキさん…!?」


あの時と服装は違うし、何より翼が出ていないが、水色の髪と瞳、そして声がユヅキさんだった。私を守るようにユヅキさんは立っていた。















  第3話  仲間















「あ、あの!怪我は!?」

「問題ありません」


心配で思わず立ち上がって問えば、私を安堵させる様に微笑みながら握っている自身の右手を開くとそこには先程撃たれたであろう弾丸があった。手で防御した、という事だろう。素手で受け止めるなんて一般人が出来る事ではない。天使だから…なのかな。とにかく無事でよかったと思い息を吐く。


「…やっと出てきたか」

「どういう事だ?」

「さっきから誰かが俺達を見てるって事はわかってた。だけど全然出てこないからこうしたんだよ。そしたら予想通り出てきたな、噂の天使さんよ?」


銃を降ろして立ち上がったトレインさんは立ち上がる。続く様にスヴェンさんとイヴちゃんもソファーから立ち上がった。ユヅキさんが見てるなんて全くわからなかったのに、トレインさんはわかっていたんだ。どうしてユヅキさんは私達を見ていたのだろう。
ユヅキさんはトレインさんを見ると鼻で笑って目を細める。


「…なるほど、只者ではないな。だが明様に銃を向けて撃つとは貴様…覚悟はできているだろうな」

「ちょ、ちょっとユヅキさん!?私なら大丈夫ですから!トレインさんには何もしないで下さい!」

「!お前…」


口調が全然違うユヅキさんに、このままでは駄目だと思いトレインさんの前に立ってユヅキさんを説得する。後ろからトレインさんの戸惑う声が聞こえた。


「その、さっきは確かに怖かったですけど…。本当は優しい人だと思います!」


確かにトレインさんは私に銃口を向けて撃った。でもそれはユヅキさんをこの場に現す為にしただけって言ってた。悪気はなかったのだと、私は…信じたい。
暫くユヅキさんと目が合わせていたが、今度はトレインさんに目を向ける。


「…明様がそう言うのなら…許してやる」

「随分上からだな…」

「ありがとうございます。…良かったですね、トレインさん!」


トレインさんに振り向いて安心した私は笑う。本当、喧嘩とかにならなくて良かった…!トレインさんは良かったのか…?と首を傾げているけど。


「…で、だな。こいつが話に出ていたシズクの部下のユヅキって奴なのか?」


気になったスヴェンさんが私に問いかける。そうですと返答しようとしたが、空気が変わった気がした。それはユヅキさんから放たれていると私でもわかった。恐る恐る目を向けるが、ユヅキさんは眉間に皺を寄せて黙ったままスヴェンさんを見ているだけ。それでも怒っているのは伝わってくる。何に対してなのかはわからない。


「スヴェン」


一体どうしたのだろうと少し怖気付きながら訊く前にトレインさんがスヴェンさんを呼ぶ。そしてお互いに目を合わせればスヴェンさんが軽く頷き、咳払いをした。


「…シズクさんという方の部下がユヅキの事なのか?」

「…そうだ」


改めて聞き直したスヴェンさんに対し、ユヅキさんが漸く返答をすると共に怖い空気が無くなった。…あ、なるほど…。自分の事は呼び捨てにされても、シズクさんの事は許さない。やっぱりシズクさんの事は大切な人なのだろう。ユヅキさんって怒らせたら怖いというのは充分にわかった。それにしてもそれを察した二人も凄い。


「…でも、だったらどうして翼がないの?」

「こんな所で翼を出していたら大変な事になる。だから隠しているだけだ。普段は出している」


確かに皆見たら『天使がいるぞ』ってなるよね…。確実に目立つ。今のユヅキさんはどう見ても只の人間にしか見えない。これで天使、なんて誰もわからないよね。


「とか言って実は天使じゃねぇんだろ?」

「貴様っ…!」


後頭部で手を組みながら言うトレインさんにユヅキさんは睨む。こ、この二人は何か駄目な気がする…!仲良く出来そうにないというか。…よく考えたらトレインさん私の話を信じてない、よね。少しだけ悲しいな…。


「…良いだろう。見せてやる」

「え?ユヅキさん!?いいのですか!?」

「かまいませんよ。明様が言った事は事実だとわからせます」


そう言うとユヅキさんから光が溢れる。あまりの眩しさに目を閉じた。
 
 
 
 
 


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