『クリードを捕まえよう。これ以上あの人を放っておいたら駄目だよ…』
「イヴ…」
「イヴちゃん…」
第23話 親友
「そいつは…次の掃除の標的[ターゲット]をクリードにしよう…って言ってんのか?」
「うん。昨日ティアーユ博士の話を聞いてて思ったの。これ以上あの人の好きにさせちゃいけない。一刻も早く捕まえなきゃ…って」
イヴちゃんはストークタウンの教会で会った時から危険だと知っていたという。何故人を傷つけながらクリードは平気な表情[かお]でいられるのか。クリードにとって"人殺し"は自分が本を読むのと同じ位自然で当たり前の事だから何も感じない。その時はわからなかったが、今ならわかるとイヴちゃんは言った。
「…あんな人をこのまま思い通りにさせてたら、きっと大変な事になる…」
「私はイヴちゃんの意見に賛成だよ」
「…明」
「クリードを止めたい。あんな考え、私にはわからない…ううん、わかりたくもない。それにあの人と一緒にいるドクターも止めたい。司を…絶対助けたいから」
皆を見てキッパリと言い放つ。どちらかというと私はドクターの方がどうにかしたい気持ちがあった。司をあんな風にした原因の人のはずだから。
司は今どうしているのだろう。クリードは自分達の同志でも容赦なく斬り捨てる人なのを知っているから不安になる。無事である事を祈る事しか出来ない自分が悔しい。早く助けにいかないと。
一人で悩んでいるとイヴちゃんが私の名を呼ぶ。心配そうに見つめてくる彼女に私は大丈夫だと微笑み返す。
「それに、借金の事もそろそろ考えないと駄目じゃないかな?」
「明もそう思ってたんだ。賞金30億のクリードを捕まえれば一気に私達の借金も無くなるよね」
返済の為にいくつかアジトを手放したけど、それでも確か一千万以上は残っているんだよね。…うーん、改めて考えるととんでもない金額。元の世界で普通に働いてても返済するのは無理すぎる額だと考えてしまう。
スヴェンさんがよろけながらも「す…すまねぇ。そんな心配までさせて…」と申し訳なさそうに言う。私達全員の問題だからスヴェンさんが謝る事ではないけど…。
「いやー、大変だなぁ二人とも!」
「他人事かよお前っ!」
「…トレインさんの意見は?」
笑って聞いているけど、トレインさんはどう思っているのだろう。掃除屋としてクリードを捕まえる事に関してどう思っているのか。改めてスヴェンさんが訊けば少しの沈黙の後、トレインさんは答える。賛成だ、と。…後付けでカップラーメン暮らしからおさらばしたいとも言ってたけどね。
「それに…この力でクリードの奴に一泡吹かせてやるのも悪くねぇ」
「!」
飲み終わったミルクの瓶を高く上に投げる。そして彼は装飾銃を構えた。電気を帯びている装飾銃の銃口を上空にある瓶に向けて一発放つ。それは昨日の夜に見た…電磁銃[レールガン]と正に同じだった。落ちてきた瓶は完全に半分が無くなっていた。
「電磁銃…」
「トレインお前…自分の意志で電気を起こせるようになったのか!?」
「ああ。昨日は力が暴走してるって感じで全然コントロールできなかったんだけどよ、一晩寝たら体が慣れてきた…って感じだな」
だから思い通りにいつでも放電できる。でも静電気ぐらいの電気だからそのまま攻撃には使えないらしい。それでも凄いよ…!
喜ぶ私とスヴェンさんに対し、イヴちゃんは悔しそうにトレインさんを見ていた。多分スヴェンさんが喜んでいるのが原因だろうけど。可愛いなぁ、イヴちゃん。
「いつでも自由に装飾銃を電磁銃に出来るようになったって事だろ!?」
「いや、実はそーでもねーんだけどな」
「え!?」
「なーんせ一発の電磁銃だけですんげぇ体力持ってかれちまうんだ。一日に何発撃てるかとか色々試してみねーと」
やっぱりそんな良いようにはならないよね。今の一撃だけでもトレインさんの体力を削ったのは少し心配になる。
トレインさんはリスクがあったとしても、この能力は"道[タオ]"の能力にひけをとらないと言った。
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