「なぁスヴェン。ルナフォートタワーで俺がクリードと闘ってから随分経つよな」
「ああ。あれは…イヴが仲間になった直後ぐらいだったから…もう半年ぐらい前になるな」
私がまだ皆と出会ってない頃の話なのは聞いていてわかる。きっとそれも、トレインさん達にとって大事な出来事だったのもわかる。
「あれからずっと考えてたんだ。奴との決着[ケリ]のつけ方…ってのをよ」
「決着の…つけ方?」
「ああ。あいつの―――サヤの仇討ちって形じゃなく…な」
「!」
サヤさん。度々トレインさんの口から聞いてきた人の名前。トレインさんの大切な人でーーー親友。
「掃除屋として決着をつけようと思うんだ。それが一番今の"俺らしい"決着のつけ方だろ?…秘密結社[クロノス]の黒猫[ブラックキャット]としてクリードを"抹殺"するんじゃなく、掃除屋のトレインとしてクリードを"確保"する…!」
それなら仇討ちという形にはならないと笑いながら言うトレインさん。でもスヴェンさんは真剣な表情で続けて訊いた。サヤさんと…クリードとの因縁について。スヴェンさんとトレインさんは長い付き合いだけど、それでもちゃんと聞いてないみたい。
「そうだな…。今やスヴェンや姫っち、それに明にも無関係の話じゃねーもんな。たまには昔話もいいか…。俺が秘密結社を抜けた―――あの時の事を」
それは今から二年前の話。とある任務で怪我をしたトレインをまるで捨て猫を拾ったかのように自宅に連れていったのは…浴衣を着ている女性。それがミナツキ=サヤだった。
『…意外…。伝説の殺し屋でも怪我する事があるの?…黒猫さん』
『…?何でわかった』
『一目見ればわかる人にはわかるよ。そりゃこれでも普段は掃除屋やってるもんでね』
『掃除屋…?』
聞いた事もない言葉にサヤは言う。犯罪者を追っかけながら世界中を旅をしていると。この街には休暇のつもりで滞在してもう一週間になるとも。
『女が掃除屋か…。何か事情でもあるのか…?』
『…別に?気ままな野良猫暮らしが性に合ってただけっスよ』
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